エネルギー消費が実質的にゼロとなる「ゼロエネルギー住宅」のニーズが高まっている。2020年までに新築住戸の過半数に広げる政府の政策が追い風となっている。建築界向けの専門誌「日経アーキテクチュア」から最新事例を紹介する。

 2016年春、秋田県大仙市にエネルギーを自給自足する「佐戸の家」が完成した。地元の工務店、もるくす建築社を率いる佐藤欣裕代表の自宅だ。電気はもちろん、ガスも買わずに暖・冷房や給湯をまかなう。宮城学院女子大学生活科学部の本間義規教授は「商用電源を引き込まない『オフグリッド』を実践している究極の家だ」と評する。

太陽光発電パネルや太陽熱集熱器は冬でも日照が得やすい南向きの庭に設置。蓄電池や貯湯タンク、蓄熱体となる壁や土間など、エネルギーを保存する多様な場も住宅内に用意した。まきストーブやまきコンロもあるため「太陽が出ない日が続いても暖房、調理、入浴は可能。照明だけ利用できない」(佐藤代表)

 エネルギー消費が実質ゼロになる「ゼロエネルギー住宅(ZEH)」は既に、多くのハウスメーカーが手掛けている。ただ、そうした住宅は熱損失の大きい窓の面積を小さくしたり、大容量の太陽光発電パネルを設置しているケースが少なくない。

 佐戸の家は、床から天井まである大きな窓を南面に設けている。太陽光発電パネルの容量も、エコ住宅としてかなり小さい2.2キロワット(kW)にとどめた。省エネ住宅に詳しい、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の前真之准教授は「2050年の家の在り方を垣間見せてくれる住宅だ」と指摘する。

熱と電気を多様に保存
●「佐戸の家」の図面と主な設備

 重視したのはエネルギーをムダにしないこと。そのために自然エネルギーや建物の蓄熱効果をフルに活用した。

 例えば、太陽エネルギーは発電と給湯の両方に使う。雪が多い地域のため太陽光発電パネルは屋根上ではなく、日当たりの良い南向きの庭に置いた。

 南面の壁内部には太陽熱集熱器を並べて熱源とした。これらでつくる温水は給湯のほか、冬季には1階の土間暖房やパネルラジエーター(温水暖房)にも利用する。夏季はパネルラジエーターに冷水を流して冷房に用いている。

 リビングに置いてあるまきストーブも部屋を暖めるためだけに使うのではない。燃焼によって生じたエネルギーのうち3割を放熱に、7割を給湯に使っている。こうした熱エネルギーを「湯」としてためておくため、キッチン内に1000リットルの貯湯タンクを設置した。