③死角の低減も大きなメリットだ。画角が20〜30度とされるドアミラーに比べて、広角の映像を撮影できる。撮影範囲は自動車メーカーごとに異なるが、40度ほどが目安になりそうだ。
独BMWのコンセプト車「i8ミラーレス」は、片側に3台のカメラを搭載し、より広い範囲を撮影できるようにした。「例えば、交差点を曲がる際に死角を減らせるように、走行シーンごとに表示映像を調整する」(BMWの開発担当者)。画角や向きの異なる3台のカメラで撮影し、状況に応じて運転者が求める映像を表示できるようにした。
最近では、世界的に人気を集めているSUV(多目的スポーツ車)の後方視界の悪さが問題になりつつある。クラスIの電子ミラーを使えば、死角を大幅に低減することが可能だ。
④電子ミラーのカメラ部の体積は、従来のドアミラーに比べて2割以下と小さく、空気抵抗を低減できる。この特性に着目したのが独フォルクスワーゲン(VW)だ。2013年に限定販売した「XL1」に電子ミラーを採用した。燃費性能を追求した車両で、リッター111kmを達成した。超低燃費を実現するため、0.189という極めて低い空気抵抗係数(Cd値)に仕上げている。このCd値の実現に、電子ミラーが大きく貢献した。カメラ部の突き出しは数cmに抑えた。
日産も、電子ミラーの空気抵抗に関する性能の高さに期待を寄せる。同社は燃費以上に、「ドアミラーから発生する風切り音の低減に注目している」(日産の空力技術者)。同技術者の試算では「例えば、ドアミラーの体積が8割小さくなると、Cd値は0.30から0.29になる」という。
Cd値の効果としてはわずかに見えるが、日産が注力するEV(電気自動車)では大きな収穫になる。ガソリン車であればエンジン音がある程度かき消してくれるが、静粛性を売りとするEVでは不快音の発生源はとにかく抑えたい。風切り音の発生源であるドアミラーが、運転席や助手席に近いことも対策を急ぎたい理由の一つだ。
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