テスラやパナソニックが米ネバダ州で建設中の「ギガファクトリー」。大規模生産でリチウムイオン電池の製造コストを大幅に引き下げる。バッテリーセルの生産は2016年末までに開始する(写真提供=テスラ・モーターズ)

 旺盛な需要を満たすため、テスラは自らリチウムイオン電池の大量生産に取り組んでいる。2014年6月に米ネバダ州で建設が始まった「ギガファクトリー」は、全世界の電池メーカーを驚愕させる規模となっている。

 バッテリーパックの生産は当初、2020年までに年間で35ギガWhと計画されていた。これだけでも、2013年に全世界で生産された全ての電池の容量の合計に匹敵する。

 ところがモデル3の人気などを受けて、テスラはEVの生産計画を2018年に50万台以上と上方修正した。それに伴いギガファクトリーの生産規模も2020年に150ギガWhへと大幅に引き上げた。これだけ生産量が増えれば量産効果が高まり、電池1セル当たりの価格が大きく下がるのは確実と言える(下のグラフ参照)。

開発のスピードが問われる
●リチウムイオン電池1セル当たりの価格指数
注:2008年を100として指数化

2025年にはドアが閉まる?

 全固体電池などを開発、製造するメーカーの多くは、2020~25年を市場参入の目標時期とする点で一致している。EVなどが本格普及する時期を見込んだ結果のようだ。欧州の大手自動車メーカーの技術者は、「現在のリチウムイオン電池に代わる新電池の採用は2025年まではないと思っていたが、全固体電池なら2025年はあり得る」と最近の技術開発の進展を評価する。

 ただし、参入時期の設定は、こうした前向きな理由の他に別の理由もある。「開発に悠長に時間をかけていると、既存のリチウムイオン電池の製造コストが、新しい電池が追い付けないほど下がってしまい、市場に参入するチャンスがなくなる」(ある次世代リチウムイオン電池メーカー)という理由である。米国ではテスラ以外にもリチウムイオン電池の大量生産に乗り出す企業が相次いでいる。

 加えて2025年以降には、リチウム硫黄(Li-S)電池、あるいはリチウムイオン以外のイオンを使う全く新しい電池が実用化される可能性もある。「先手を打つ形で我々の新電池を実用化して、そうしたエキゾチックな電池技術の市場参入を阻まないといけない」(上述のメーカー)という姿勢も、2025年を市場参入の期限とする理由の一つになっている。全固体電池の高い潜在力を生かせるかどうか、予断を許さない。


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野澤 哲生
日経エレクトロニクス記者


(日経ビジネス2016年9月5日号より転載)