海外の大企業も動き出している。自動車部品大手の独ボッシュは昨年9月、全固体電池を開発する米シーオ(Seeo)を買収した。シーオは「ロール・ツー・ロール」と呼ぶ、全固体電池の大量生産に最適なプロセスを開発していた有力なベンチャー企業だ。

 詳細は明らかとなっていないが、米アップルも全固体電池の開発に本腰を入れ始めた模様だ。今年3月、全固体電池の開発に携わる技術者の公募を始めたからだ。「iCar」と呼ぶEVを開発するのが目的とみられており、数百人規模のエンジニアを集めている。

ダイソンは年間利益2倍を投資

英ダイソンのロボット掃除機は自ら進路を決め、電池で駆動する(上)。全自動運転が実用化されれば、ロボット掃除機とEVは要素技術がかなり重なる(下は米テスラ・モーターズの「モデルS」)(写真提供=掃除機:ダイソン、EV:テスラ・モーターズ)

 投資額が判明している中で最も目立つのは英ダイソンの動きだろう。同社は昨年、9000万ドルを投じて、半導体プロセスに基づく全固体電池を開発する米シャクティー3(Sakti3)を買収した。今年3月には、その全固体電池を実用化するため今後5年間で研究開発に10億ポンド(発表時約1800億円)を投じると発表した。

 これらを合算すると約1900億円となり、これはダイソンの2015年度の売上高(17億ポンド)の6割に相当、同年の利益の2倍を超える。

 シャクティー3は米ミシガン大学発のベンチャー企業。買収前はコンピューターシミュレーションが中核技術で、1170Wh/Lと体積エネルギー密度が非常に高い電池セルの構造を発見したと発表していた。

 半導体プロセスに基づく量産技術の開発は手つかずだったとみられるが、ダイソンによる巨額投資はこの技術開発に充てられる可能性が高い。金額の大きさを考慮すると、技術の確立だけでなく、製造工場まで建設してもおかしくない規模だ。

 シャクティー3にプロセスがやや似ている英イリカは、150mm(6インチ)ウエハー上に全固体電池のセルを半導体プロセスで製造することに成功している。製造速度の点でも大幅に向上したとする。ダイソンの巨額の投資も、無謀な賭けではない可能性が出てきた。

 各社が一斉に全固体電池に開発資源を集中させているのは、蓄電池の需要が今後爆発的に伸びると判断しているからだ。需要を大きくけん引すると期待されているのがEVである。

 日産自動車は小型EV「リーフ」に続き、2014年には商用車でも「e-NV200」を投入した。さらに高級車ブランド「インフィニティ」でもEVモデルを追加することを表明している。

 EVの販売実績で世界首位を走る日産ではあるが、激しく追い上げているのが米テスラ・モーターズだ。既に全世界で14万台以上のEVを販売しているが、今年3月に発表したEV「モデル3」の予約件数が受け付け開始から24時間で約20万台、同1週間で32万5000台に達したと発表した。洗練されたデザインと3万5000ドル(約350万円)という手ごろな値段が高い支持を集めている。