ドコモは先行マーケティング

 NTTドコモは、APIが生み出す経済圏の可能性に早い段階から気付いていた一社だ。自社の研究開発で生み出した成果を、APIとして惜しみなく外部提供する。2013年11月から2年半で、1万弱の外部開発者がAPIの利用申請を済ませた。累計で5000以上のアプリが生まれ、1年間でAPIが呼び出された回数は5000万に及ぶ。

 狙いの一つが、パートナーとの協業で新ビジネスの創出を目指すこと。APIを通じて資産を開放し、有望なパートナー候補を呼び込む。

 もう一つが、先行マーケティングとしての位置付け。APIの利用傾向から、次のトレンドとなるサービスの姿が浮き彫りになるからだ。

 例えば、教育ベンチャーのすららネットは全国600の学習塾や90の学校が導入するデジタル教材「すらら」にドコモのAPIを組み込んでいる。

 「勉強を続けてえらいね」「次は英語をがんばってみよう」──生徒が問題を解くなど学習を進めるたびに、パソコン画面上の仮想キャラクターが適宜話しかけて応援してくれる。ドコモが公開した「シナリオ対話」と「雑談対話」の2つのAPIを活用している。

生徒の学習進度に応じて適切に助言
●デジタル教材「すらら」の新機能「AIサポーター」
(写真=上:すららネット、下:新島学園中学校・高等学校)

 手応えを感じたドコモは2016年8月上旬にも、対話アプリを手軽に作製できる商用サービスを始める計画。先行マーケティングで見極めたAPIを新たな収益源に結び付けた好例だ。

 ただ、APIを公開しただけで経済圏は生まれない。公開するからには、外部の開発者に寄り添い続ける努力が必須となる。その意味で、API公開企業には覚悟が求められている。

システム管理者・情報システム担当者などのITプロフェッショナルからITで企業改革を進める経営者まで有益な情報を提供しています。
(写真=新関 雅士)

岡部 一詩
日経コンピュータ 記者


(日経ビジネス2016年8月1日号より転載)