「グーグルマップ」が代表格
Web APIとは自社の情報システムの使い方をルールとしてまとめたもの。ネット経由で他社にも使いやすくなる。ネット業界では2000年代からAPIの公開・活用が当たり前だった。代表格が「Google Maps API」だ。同APIを利用すれば、米グーグルが提供する地図機能を外部の企業や個人が利用できる。
日本でも楽天やリクルートホールディングスそしてヤフーなどが積極的にWeb APIを公開。ネット業界が発展する原動力となった。その流れが今、ネットとは縁が遠かった伝統産業にまで広がってきている。
バンダイも寺田倉庫のWeb APIを利用する一社だ。個人からフィギュアなどのコレクションを預かるサービス「魂ガレージ」を共同で提供する。
このようにAPIを公開することで自社だけでは想像も付かなかったサービスが生まれ、新しい顧客を呼び寄せた。それが寺田倉庫自身の成長にも寄与する。minikuraの売上高は APIを公開後の2014年に前年と比べて2.3倍に伸び、2015年はさらに前年比で2.8倍へと跳ね上がった。
使う側の企業にとっても、他社が持つ設備や機能を活用して、自社サービスの競争力を低コストで高めやすくなる。実際、minikura APIを使って事業を始めたい企業が約20社、待っている状態だ。「早い段階でAPIを公開したからこそ、多くの企業から声をかけてもらえている」(寺田倉庫の藏森安治氏)という。
戦略的にAPIを公開する動きは全世界に広がっている。技術情報サイト「ProgrammableWeb」によると2016年7月現在、ネット上で公開されているWeb APIは約1万5000。5年前と比べて4倍以上に増えた。
背景には多くの産業で、単独で全てのサービスを開発・提供するビジネスモデルが限界を迎えつつあることがある。象徴的とも言えるのが、フィンテック旋風が吹き荒れる金融業界だ。
IT系のスタートアップ企業や大手ネット企業が、金融機関が独占的に手掛けてきた金融サービスに風穴を開け、消費者の支持を集め始めた。金融機関は、外部にビジネスアイデアを求めたり他サービスとの連携を模索したりする必要に迫られている。
金融業界に限った話ではない。電力自由化の波で競合が一気に増えた電力会社、MVNO(仮想移動体通信事業者)の普及で熾烈な競争にさらされている通信事業者なども状況は同じだ。
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