遺伝子を改変する技術としては、1970年代から遺伝子組み換え技術が実用化されてきた。ただ、従来の手法では、塩基配列が偶然に入れ替わる現象が起きるまで実験を繰り返す必要があった。しかもゲノム上の狙った遺伝子が変化する確率も極めて低く、時間と費用がかかっていた。

 例えば、ある遺伝子の機能を調べる場合、その遺伝子の機能を止めたマウス「ノックアウトマウス」を作製するのが生命科学では定石となっている。これまで1つの遺伝子をノックアウトするのに1年~2年の時間がかかり、費用も300万円~500万円を要した。

 最新のゲノム編集なら、期間は1カ月~2カ月と短く、費用も数十万円で済む。そのため研究が大幅にスピードアップし、バイオ業界に桁違いの効率性をもたらした。

 さらにゲノム編集では、同時に複数の遺伝子をノックアウトしたり、ノックインしたりすることもできる。あたかも文章を編集するように、ゲノムを自由自在に書き換えられるようになったのだ。

ゲノムとは
DNAのすべての遺伝情報のこと。DNAは、4種類の塩基(アデニン=A、グアニン=G、チミン=T、シトシン=C)が鎖のように連なっている。4つの塩基の並び方(塩基配列)こそが生物の遺伝情報である。
研究効率が飛躍的に向上
●遺伝子組み換え技術とゲノム編集の比較
遺伝子を人為的に改変するのは同じ。ゲノム編集は操作が簡単で効率も非常に高いため、バイオ分野の研究スピードを大きく向上させた
より正確に、より確実に遺伝子を改変
●最新のゲノム編集に使われる人工酵素(クリスパー/キャス9)
ゲノムを構成するDNAの中から標的とする塩基配列を見つけ出し、指定された位置でDNAを切断する
DNAの任意の位置に切れ込みを入れることで、特定の遺伝子の機能を止める
外来の遺伝子を加えておけば、DNAの切断した位置に挿入(ノックイン)できる