楽器のように歯ブラシを操る

 ギターやドラムなどの楽器を演奏するように歯磨きをガイドするアプリや、モンスターを退治しながら楽しく歯磨きできる子供向けのアプリなどもある。16年4月に発売されると話題を呼び、既に数万個が売れたという。

 サンスターは18年1月に、歯科医院との連携を強化した新アプリをリリース。歯科医院での診察結果を基に虫歯や磨き残しの多さを登録でき、ブロックごとに最適な時間配分を設定できるようにした。加えて、富士通が以前から歯科医院向けに提供していたクラウドサービスと連携。日ごろの歯磨き状況が歯科医院に伝わり、受診するたびにフィードバックを受けられる。富士通とサンスターは20年までに、約500の歯科医院にクラウドサービスの導入を目指すとしている。

 電動歯ブラシ市場を切り開いてきた欧米メーカーも負けてはいない。16~17年にかけて、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)・ジャパンは「ブラウン オーラルB」シリーズ、フィリップス・ジャパンは「ソニッケアー」シリーズの最高機種を発売。いずれも本体にセンサーを内蔵してスマホアプリと連動させ、磨き残しのないようにガイドしたり、強く磨き過ぎるとアラートで知らせたりする機能などを搭載した。

 医療機関向けの画像診断装置なども手掛けるフィリップスは“患者中心のケア”を実現すべく、日常生活から予防、診断、治療、在宅療養まであらゆるヘルスケア関連情報を集める基盤づくりを進めている。電動歯ブラシを通じて得られる歯磨きデータは、その格好の素材となるわけだ。

歯の健康にまつわるデータ
出所:厚生労働省、日本歯科医師会など
出所:厚生労働省、日本歯科医師会など

 各社が歯科医院との連携を視野に入れたスマート歯ブラシを開発する理由は明白だ。口腔内の衛生状態の悪さが、糖尿病や動脈硬化など全身疾患のリスクを高めることが、相次いで明らかになってきたからだ。歯磨きが不十分な高齢者はきちんと行っている人に比べ、認知症の発症率が1.7~1.8倍高いとの研究結果も報告されている。

 日本歯科医師会が16年に実施した全国調査では、直近1年間に1回以上歯科医院で検診を受けた人は44.6%にとどまった。厚生労働省は80歳で自分の歯を20本以上保つという「8020運動」を推進するが、実際に達成できているのは約半数だ。

 「歯が痛くなってから受診する人や、治療を受けても正しい歯磨きを続けられず悪化してしまう人は少なくない。歯の健康を維持するためには、日ごろから歯科医師や歯科衛生士による適切な指導を受けられる環境を整えることが重要だ」。富士通第二ヘルスケアソリューション事業本部の武久文之マネージャーは強調する。前述の日本歯科医師会の調査によると、定期的に歯科医院を受診する人は31.9%。アプリを通じて歯科医師らとデータを共有すれば受診のハードルが下がると期待される。

 これまで誰も把握し切れなかった日ごろの歯磨き行動がビッグデータとして集まれば、疾患との関連性も検証できるようになる。歯磨きによる医療費削減効果が明らかになる日も近いかもしれない。

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