装着して一体となり、人間の動きを補助するパワーアシストスーツ。ベンチャーを中心に研究開発が進み、いよいよ製品化が始まった。作業者の高齢化や人手不足で悩む重作業現場での導入が期待されている。
空港のチェックインで活用
成田空港で活躍するサイバーダインの「HAL」。装着すると荷物を持ち上げる作業負担が軽減する(写真=竹井 俊晴)

 午後4時30分、航空便の乗客で混み合う成田空港のチェックインカウンター。空港の作業員は、乗客から持ち込まれるスーツケースをベルトコンベヤーに運ぶ。作業員が腰に着けているのはサイバーダインが開発した作業支援のロボットスーツ「HAL」だ。足腰をかがめて荷物を持ち上げたり、中腰姿勢で運んだりする作業を助ける。

 成田空港を運営する成田国際空港は、実証実験のため10台のHALを2017年1月24日から2月18日まで導入した。期間中に実施したアンケートでは、11人中10人が負担軽減を実感するなどの効果を認めた。同社担当者は「作業現場の高齢化が進み腰痛を訴える人もいる。こうした装置によって作業負担が解消されれば、高齢でも働ける。新たな働き手を呼び込むことにつながり、人手不足の解消にもなる」と話す。

 人が身に着け、機械が人と一体となって人の動きを補助する装置は一般に、「パワーアシストスーツ」と呼ばれる。建設、物流、農業、工場など幅広い重作業現場での導入が進みつつある。

荷物を持ち上げる時に力が加わる
●足腰の動きを補助する仕組み

 こうした職場ではかつて、力のある若い男性が多く働いていたが、最近では高齢者や女性も多い。これに伴い、補助装置を必要とする企業や現場が増えているのが実情だ。

 一般的なパワーアシストスーツの構造を単純化すると左の図のようになる。太ももの部分に装着するフレームと、腰や上半身に装着するフレームがちょうつがいのように腰の両脇で接合しており、両フレームを広げる時に装置からの力が働いて人間の動きを補助する。かがむと角度が小さくなり、荷物を持ち上げると角度が大きくなる。

 重要なのは、装置がいかに人の動きに違和感なく合わせられるかにある。装置が人の意に反して動くと使いづらい上、人体に危険を及ぼす可能性もある。

 パワーアシストスーツの開発で先行しているのは、冒頭で紹介したサイバーダインなどのベンチャー企業だ。

 サイバーダインは2004年の設立以来、身体に障害のある人向けに脳神経系の機能改善・再生を促す医療機器としてHALの研究開発を進めてきた。その技術を活用して、一般健常者向けに作業支援用HALを開発。2015年から本格的に出荷を開始している。

 同社の山海嘉之社長は、「HALの技術を介護現場で重労働をしている作業者の負担を軽減するのに役立てたいと考えた」と話す。

 現在、作業用のHALは介護支援用と作業支援用の2タイプがある。重さは約2.9kgで、バッテリーで駆動する。装置中央(腰の部分)の左右にモーターを装備している。人がしゃがんでから物を持ち上げたり移動させたりする作業の時に、その屈伸運動に合わせてモーターを動かし、腰椎や椎間板にかかる負荷を低減する仕組みだ。