出雲: 西岡さんは今回なぜ『一流マネジャーの仕事の哲学』を書かれたのですか。

西岡: 昨年西岡塾が15周年を迎え、15周年記念パーティを開催しました。そこに大勢の卒塾生が来てくれて、皆の熱い視線を見て、これは何か責任を果たさなくてはと感じ、皆の学びを本にしようと思ったのです。

出雲: 西岡さんのことだから、本を書くことでまた何かを学ばれたのでしょうね。

西岡: 今回の著書には、私がシャープにいた頃の辻晴雄社長とのエピソードと、次に移ったインテルのアンディ・グローブCEOとのエピソードをたくさん書きました。アンディはすでに亡くなっていますが、辻さんはご健勝なので、ご自宅に原稿をお送りして全文をチェックしていただきました。

出雲: 何と言われましたか。

西岡: これ見てください(下の写真)。一瞬「これはあかん! 出版できない!」と思いました。「えーーダメですか?」と聞いたら、「おもろいわ。この本、良くできてる」と言われるのです。うれしかったです。

西岡さんのシャープ時代の上司、辻晴雄元社長が付箋をたっぷり貼った校正紙。これを見た瞬間、西岡さんは「これはあかん! 出版できない!」と思い、ダメかと尋ねたところ、辻さんの答えは「おもろいわ。この本、良くできてる」とのこと。ただし、一箇所だけ修正の提案があった。
西岡さんのシャープ時代の上司、辻晴雄元社長が付箋をたっぷり貼った校正紙。これを見た瞬間、西岡さんは「これはあかん! 出版できない!」と思い、ダメかと尋ねたところ、辻さんの答えは「おもろいわ。この本、良くできてる」とのこと。ただし、一箇所だけ修正の提案があった。

出雲: じゃ、「これを直せ、俺を格好よく書け!」じゃなくて、面白いところに付箋を貼ったのですね?!

「頑張れ!」と「勝手にせえ!」その違いを考えよ

西岡: 一箇所だけ修正点がありました。ノートパソコン発売の最後の決裁を社長にサシで談判したときの場面です。事業部、本部の利益に加えて、本社の利益までは出ない決裁でした。「商品は魅力的なので絶対売れます。売れれば数が増えて、仕入れ値が下がって利益を出せます。とにかく発売させてください」と能力の限りを尽くして辻社長に頼みました。

 必死に粘った結果、辻社長は「勝手にせえ!」と決裁書を投げられました。私はヒラヒラと床に落ちた決裁書を拾って「ありがとうございます! 頑張ります!」と言い、即、社長室を退室しました。ダメなら、「待て!」と呼ばれるはずですから。

 その場面について、「西岡、『よし頑張れ!』と『勝手にせえ!』にはギャップがあるで、そのギャップを君は考えたか?」と聞かれるのです。

 愕然としました。確かに! そんな大切なことに私は気づいていなかったのです。ミドルとしてこの商品の良さ、これだったら売れるという社長への説得が完璧にはできていなかったのです。

 帰宅後に原稿に付け加えました。こうやって、辻さんがさらに本の内容を良くしてくれているのです。上司というものはそういうものです。

出雲: いい話ですね。

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