出雲: 「これは譲れない」というのはよくありません。生物はフレキシブルで、環境の変化に対応できるものが勝ち残ります。人間も生物です。フレキシブルでなければいけません。例えば、ある時代にはヒットする事業や商品かもしれませんが、時代が変わったら時代遅れになることがあります。ミドリムシのように柔軟に環境の変化に応じて変わることが、生物としての強さの源泉です。変わらないことはリスクになります。

 もちろん、その変化は「生物の視点で考えて、無理なことは無理」ですよ。私が目指すのは、変われなかったために絶滅した「恐竜」ではなく、5億年もの長い間柔軟に変わり続けてきて、いまだに健在なミドリムシです。

西岡: それは大事なことですね。塾でも塾生が講師に向かって、「先生は若い頃からいまの名声、社会的地位を得ることを目指して計画的に努力してきましたか」という質問をすることが多いのですが、実は皆、その場その場で柔軟に、最適に流れていった結果である、ということが多いと思います。

「戦略的に」より「柔軟に」、AIも味方に

出雲: そうなのです。柔軟に変わってきた結果が今なのです。ところが、多くの人は「戦略的に方針を決め、それに向かって私はこう努力してきたから、こうなった」というシナリオを聞きたいのです。そんなに戦略的にキャリアプランしている人はいないでしょう。

西岡: では仕事をする上でのモットーは、変化に順応して生きよ、ということでしょうか。

出雲: そうですね。西岡さんのコラムにも書かれていましたが、世界一の囲碁棋士イ・セドルにGoogleのAI、アルファ碁が4勝1敗でボロ勝ちしました。AIはすごいと、世界中の頭脳労働者が脱帽だといいますね。エキスパートシステムのように昔のAIに柔軟性がなかったのに比較して、アルファ碁などは経験から学びを得て、どんどん賢くなっていくといいます。

 でも、出雲充は、ミドリムシの方が優秀な先生だと思っています。生物が変化に対応するというのがいちばん信頼できるし、理にかなっているものです。

西岡: 私は、AIは敵にするのではなくうまく利用するべき道具であると思っています。

 いまは一人の部長が数人の部下を持って仕事をしていますが、そのうち優秀な部長が持つべきなのはAIだけになるかもしれません。医者がそうであり、弁護士もそうです。弁護士は担当案件の参考になる判例を調べることが弁論の基礎ですが、数多くの判例を調べることはAIの方が優秀です。一つのチームには優秀な弁護士一人とワトソン(IBMの質問応答システム)がいればいいわけです。

 いま私がやっている塾の塾生たちに問いかけているのは、「そうなった時にあなたたちはどうするのですか?」です。「AIを敵にするのでなく、AIを上手に利用する立場になりなさい」というのが私のメッセージです。

 社長として、社員に常々言っていることはありますか。

次ページ 妥協なく論争をするという、このハーモニーが大切