スマホが人間のクリエイティビティを衰えさせる?

佐々木:当初はインターネットユーザーそのものがイノベーターだったこともあり、ユーザー同士で熱心な議論が行われていました。そうした時代が2007年くらいまで続きましたが、ユーザーだけで議論していても大衆に受け入れられる商品がそんなに多くは生まれないという問題があり、そこからはデザイナーなどが入って議論をリードするという流れができた。いまは、その発展形としてモデレーターがリードしながらデザイナーもユーザーも立場を超えて議論する、というスタイルが主流になっているかと。

鷲田:ワークショップ形式ですよね。一時期は、イノベーター、インフルエンサーと呼ばれる人を集めて会議をする、という会社がいくつかありましたが、ステマ問題もあっていまいち定着しませんでした。でも、ユーザーの声を活かして製品開発をする、ユーザーが主体になる、というのは、メイカーズブームやデザイン思考といった現在の流れにつながっている感じがします。

佐々木:なので、やはりユーザーだけであれこれ言ってもすぐれた製品アイデアが出てくる、というわけではないと、僕は思ってるんですよね。鷲田さんは、日本の消費者とメーカーが正しくユーザーイノベーションを起こせば、今でも世界マーケットに通用するものが生まれると思っていますか?

鷲田:その可能性は、今でもあると思っていますよ。

佐々木:ふむ……僕は、ソーシャルメディア以前のCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア。個人の情報発信をデータベース化、メディア化したウェブサイト)からずっと追ってきて、その時代から比べると平均的な発信者のクリエイティビティは下がってきているという認識なんです。昔はそれなりの見識と書く力がある人が書いていました。その頃に比べると、今のネット上のコンテンツはちょっとレベルが低いものが増えすぎているなと。それは、大衆化ということだと思いますが、入力デバイスがパソコンからスマホになったことも大きいと思ってるんですよね。

鷲田:スマホでのテキスト入力は、どれだけ慣れてもパソコンでの入力には劣ると。

佐々木:そういう部分はあると思っています。ただし写真は別ですね。常に身につけていて瞬間を切り取れるし、加工アプリも簡単に使えるので、一般人のクリエイティブ能力が発揮されるようになったと思います。でもそれが動画となると、もう少し高度な技術が必要になってくる。一方で、abemaTVのような完全にユーザーが受け身で消費する動画サービスも出てきましたよね。そうなると、スマホは、発信するものというより、視聴するものになっていくのかもしれない。一般人がオンラインコミュニティやソーシャルメディアに意見を発信して、それがメーカーに製品開発の場面で採用される機会は減っていくのかなとも思います。販売促進の場面では別ですけど。

鷲田:スマホによって人間のクリエイティビティにどういう影響がでるのかは、これから研究していく対象ですね。とはいえやはり私は、ユーザーイノベーションというのは、クリエイティビティが豊富な人というよりも、本当に普通の人から生まれるものだと捉えているので、これからも起こる可能性は十分あると考えています。

(次回へ続く)