日本とアメリカの友人コミュニティの違い
鷲田:ツイッター・ジャパンの方に聞いたところによると、日本では複数アカウントを持つユーザーが多いという特徴もあるそうです。そこで思い出したのが『イノベーションの誤解』に載せた、日本とアメリカの「友人」の構造の比較の図です。縦軸に「1日に自分が所属する趣味コミュニティ内でコミュニケーションをとった友人数」、横軸に「1日にコミュニケーションをとった友人総数」をとっています。回答者の友人関係全体が、所属する趣味コミュニティと完全にかぶっていたら、縦軸・横軸は同じ数字となり、斜め45度の線を描く。アメリカはわりと45度線上にいる人が多いんです。一方、日本は横軸にベターっとはりつくような分布になっている。つまり、1日にコミュニケーションをとった友人の総数のほうが、趣味コミュニティ内でコミュニケーションをとった友人数より多い。趣味コミュニティ外にもいろいろな友人がいるということです。日本では所属コミュニティをいくつかにバラけさせていて、どのコミュニティも当人のパーソナリティの社会的代表性が低いと考えられます。
佐々木:へえ、そのデータは驚きですね。

鷲田:アメリカの場合だと、例えば何かしらの政治的主張、例えばトランプ大統領を支持していたら、自分のコミュニティの大半が同じ主張、ということが起こる。クラスター化しやすいんです。日本はそんなにクラスター化が進んでいなくて、全体としてなんとなくの総意があるという状態なのではないでしょうか。右翼や左翼と言われる人たちも一部先鋭化していますが、選挙の際にはっきり分かれて争うという感じでもないですよね。
佐々木:これは何年のデータですか?
鷲田:2005年です。
佐々木:その頃というと、Facebookがアメリカの大学生に広まり、日本ではmixiがサービスを開始して1年くらいでしょうか。ソーシャルメディア普及前なんですね。
鷲田:そうですね。でも、すでにケータイのiモードは普及していましたし、2ちゃんなどのネット文化は存在していました。ベースとしての社会的傾向はあるのかなと思います。
佐々木:ツイッター社の方が書いた論文で、日本人の相互フォロー率はツイート数上位10カ国中1位という結果が出ています。100人未満ならわかりますけど、数百人~1000人レベルで相互フォロー率が高いんです。「フォロー返し」という言葉もありますよね。ネットワーク密度も高く、それぞれ知り合っている確率が高い。これだけ見ると、ネット上でもひとつのコミュニティがその人のパーソナリティを代表しているのでは、と思いますが、複数アカウントを使うことで複数のコミュニティに所属するようにしているのかもしれませんね。あとは、アメリカの回答者でも、田舎の狭い世界に住んでいる人と、大都市の世界に目が向いている人で大きな差があるのではないか、と思いました。
鷲田:そうですね。でも、アメリカは大都市でもエスニックコミュニティが存在しているので、友達のネットワークが民族的な集まりに依存しているのではないでしょうか。
佐々木:なるほど。そうすると、所属しているコミュニティはたくさんあっても、日常的に話をする人は限られてくるかもしれませんね。
鷲田:アメリカだと、美容院やレストランも、事実上民族でクラスター化されていますよね。アジア人は日常的には、アジア系のレストランに行きます。アフリカ系アメリカ人はまた違ったコミュニティがある。そういうこととは比較的整合性がある結果だと思います。
佐々木:日本はベースが単一民族・単一言語なので、そのなかで身の置き所が3つ、4つと分かれているのかもしれませんね。

(次回へ続く)
Powered by リゾーム?