ロープが上下する方式も登場
駅によっては時間帯ごとに様々な列車が停止するホームがある。例えば大阪府にあるJR京都線の高槻駅。「新快速」と「特急」では車両編成やドアの数・位置が異なる。開口部が相当広いホームドアだと対応できなくはないが、扉が長いほど戸袋や駆動部も大きくなる。
そこで、2011年から西日本旅客鉄道(JR西日本)が開発に乗り出したのがロープ式だ。普段はぴんと張った5本のステンレス製ロープが線路への進入を防ぎ、乗客の乗降時のみ支柱が2mの高さまでロープを持ち上げる。開口部は最大12mを確保し実用に耐え得る。

筐体を小型化する工夫も徹底した。約80kgある支柱を動かすには、大型のモーターが必要になる。モーター以外の補助動力があればモーターの負荷を軽減し、大型化を防げる。
エレベーターなどでは重りを補助動力に使う。シーソーのように重りで片方を持ち上げる。だがそれではホームドアの軽量化に逆行してしまう。
試行錯誤を経て行き着いたのは、バネの活用。ロープが下がった状態ではバネを圧縮しておいて、持ち上げる際はその反発力を利用する。JR西日本で開発を手掛けた相川公一・機械課長は「技術的には完成した」といい、3月から高槻駅で本格稼働が始まった。
同じく、ドア数・位置が異なる列車が停止するホームでの柔軟な対応を目指すのが、三菱重工交通機器エンジニアリングの「どこでもドア」。見た目は従来型と似ているが、センサーで2ドア、3ドア、4ドアの車両の違いを判別。適切な扉を開閉する。扉の素材などで軽量化にも配慮してある。
2014年から開発を進めており、10月末から京浜急行電鉄の駅で実証試験に入る。京急車両は2ドア、3ドアが混在し、塩害などの耐久性も検証する。
取り組みは各社各様だが、いずれもセンサーの設置などで、乗客が挟まれたり、ホームドアの閉鎖後に外側(線路側)に取り残されたり、といったトラブルは心配ないという。
ホームドアに対するニーズは、今後間違いなく増えていく。大きなビジネスチャンスをつかむため、開発競争が加速している。
(日経ビジネス2016年10月24日号 より転載)
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