「老舗に学ぶことは多い」(吉本)

尾畑:1つ、吉本さんに聞いてみたいんですが、選ぶ価値のある道が2つあったら、どういう基準で進む道を決めますか?

吉本:ストラテジックな策定ができれば、ハイリスク、ハイリターンなほう。負け戦はしたくないので。いかにも起業家的な答えになります(笑)。

尾畑:確かに負け戦はしたくない(笑)。私の選択の基準は「外的要因に支配されないほう」ですね。何かにおもねることはしたくない。商売柄もありますよね、造り酒屋のほとんどがファミリービジネスで、かつ老舗企業。肌感覚で染みついたものがあります。

吉本:お茶業界にも老舗が多く、老舗企業の当主に学ぶことは多いです。ただ、同族であるべきか否かは、まだ分からないですね。創業者として自分がどうあるべきか、考えているところです。

「世界中に扉を作っておきたい」(尾畑)

尾畑:私は娘が2人いまして、つまり、また姉妹という歴史を繰り返しています(笑)。今は、彼女たちのどちらかが後を継いでくれればいいなと願っています。実は、輸出の仕事は、その仕掛け作りでもあります。海外のパートナーとの直接輸出が多いのも意識してのこと。いつかバトンタッチする日のために、世界中に扉を作っておきたい。

 世界と佐渡をつなぐ酒は、実は私にとっては世代をつなぐ酒でもあるんです。でも、結果は分からないですね。こればかりは本人次第ですから。

老舗かつファミリービジネスの女性経営者ならではのアプローチですね。

尾畑:ときどき、自分が蔵元に生まれてなかったら、どういう道を選んだんだろうって考えるんですけど、まったく想像もつかないです。

吉本:私は生まれ変わったら、普通の女性の生活がいいですねぇ。それで、社会の歯車の一つとして生きる。でも、歯車の中央がいいです。

尾畑:それ、全然、普通じゃないですよ。

吉本:そうですか(笑)? 現実的な将来の夢としては、外国に住みたい。そして今の事業をやりたいって思っています。

尾畑: 学校蔵には校訓があって、「幸醸心」というんです。幸せを醸す酒造りを目指したい。では、人生最後の日は何をしていたいですか?

吉本:「末期の水」ならぬ「末期の茶」じゃないけど、ロイヤルブルーティーのお茶を飲みたいな。

尾畑:私は仕込み蔵で、タンクに囲まれながら「真野鶴」を飲みたい。

お二人とも、幸せな仕事をしているってことですね(笑)。今回は、長時間にわたってありがとうございました。

 吉本社長が持っているのは、尾畑専務による『学校蔵の特別授業 ~佐渡から考える島国ニッポンの未来』(日経BP社)。2010年に廃校となった“日本で一番夕日がきれいな小学校"と謳われた西三川小学校が、酒造りの場、酒造りを学ぶ場、交流の場、そして環境の場として活用する「学校蔵」として2014年によみがえらせた尾畑専務は、その活動の一環として自らが学級委員長を務める「学校蔵の特別授業」と題したワークショップを開催。そこで講義した藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員、酒井穣・BOLBOP代表取締役CEO、玄田有史・東京大学社会科学研究所教授を迎え、「地方」をキーワードに、これからの社会の激変と私たちはどう向き合って生きていけばいいのかをまとめています。
 尾畑専務が持っているのは、吉本社長による『わが社のお茶が1本30万円でも売れる理由 ~ロイヤルブルーティー 成功の秘密』(祥伝社)。2011年3月11日の東日本大震災で一時的に売り上げが前年比で半減するというピンチを乗り越え、斜陽産業と思われていた日本茶市場で業績を伸ばし続けているロイヤルブルーティージャパン。最初の顧客をクリスタルグラスのラグジュアリ-ブランド「バカラ」に決めた理由、お茶と料理のペアリングの楽しさを伝えていく「茶宴」を開催する狙い、最初から世界基準の品質管理を実現する製造工場を作ったワケなど、これまでに取り組んできたブランドマーケティング戦略を公開しています。小さな会社が勝つヒントが詰まっています。