「その土地でしかできないものを作る」(尾畑)

尾畑:その土地でしかできないものを作る、というのは大切なことです。醸造技術の発展とともに大量生産が可能になり、酒類業界でも世界標準化が進んできた側面がありますが、日本酒は地域の唯一無二の風土が生み出したものです。ここだからできる酒、にこだわりたい。

 そんな思いで始めたプロジェクトがあります。“日本で一番夕日がきれいな小学校”と謳われながら2010年に廃校になった小学校を仕込み蔵として再生させた「学校蔵プロジェクト」です。今年で3期目を迎え、酒造りはもちろん、有識者を招いてのワークショップ「学校蔵の特別授業」などにも取り組んでいます。

 ここでの酒造りはオール佐渡産。酒米は契約農家さんが作る「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」という減農薬減科学肥料で育てたお米です。この米は佐渡の特産物である牡蠣(かき)の殻を利用した牡蠣殻農法という地域の資源を循環させる手法を取り入れています。

 さらに酒造りのエネルギーも佐渡産にすべく、太陽光パネルを使って自然再生エネルギーを導入しています。この取り組みは東京大学国際高等研究所サスティナビリティ学連携研究機構(IR3S)との共同研究で行っていて、やはり地域循環型のエネルギーの在り方を考えています。

吉本:確か、佐渡も2011年に「世界農業遺産」(注)に認定されましたよね。宮崎県五ヶ瀬村も2015年12月「世界農業遺産」に認定されました。

(注)「世界農業遺産」=GIAHS(ジアス)。国際食料農業機関(FAO)が伝統的な農業・農法、景観や生物多様性に富んだ土地利用などを次世代へ継承することを目的とする。

尾畑:ずっと佐渡という場所で酒造りをしていくためには、地域の自然環境が守られていて、住む人たちが元気でなくては続けていけないんですよね。酒造りは地域創りそのものなのだと、そう思います。

 吉本社長が持っているのは、尾畑専務による『学校蔵の特別授業 ~佐渡から考える島国ニッポンの未来』(日経BP社)。2010年に廃校となった“日本で一番夕日がきれいな小学校"と謳われた西三川小学校が、酒造りの場、酒造りを学ぶ場、交流の場、そして環境の場として活用する「学校蔵」として2014年によみがえらせた尾畑専務は、その活動の一環として自らが学級委員長を務める「学校蔵の特別授業」と題したワークショップを開催。そこで講義した藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員、酒井穣・BOLBOP代表取締役CEO、玄田有史・東京大学社会科学研究所教授を迎え、「地方」をキーワードに、これからの社会の激変と私たちはどう向き合って生きていけばいいのかをまとめています。
 尾畑専務が持っているのは、吉本社長による『わが社のお茶が1本30万円でも売れる理由 ~ロイヤルブルーティー 成功の秘密』(祥伝社)。2011年3月11日の東日本大震災で一時的に売り上げが前年比で半減するというピンチを乗り越え、斜陽産業と思われていた日本茶市場で業績を伸ばし続けているロイヤルブルーティージャパン。最初の顧客をクリスタルグラスのラグジュアリ-ブランド「バカラ」に決めた理由、お茶と料理のペアリングの楽しさを伝えていく「茶宴」を開催する狙い、最初から世界基準の品質管理を実現する製造工場を作ったワケなど、これまでに取り組んできたブランドマーケティング戦略を公開しています。小さな会社が勝つヒントが詰まっています。