埼玉県寄居町のゴミ処理施設に併設したエタノール化施設のパイロットプラント

 14年からは実証実験にも取り組んだ。埼玉県寄居町にゴミ処理施設を有するオリックス資源循環と協力して、年間20キロリットルの生産能力を持つパイロットプラントを併設。3年間、周辺の家庭から収集したゴミでエタノールを生産した結果、品質や生産効率そして安定性など、事業化に必要な条件をクリアできた。工業用エタノールの市場価格は1リットル当たり90~140円。量産が進めばナフサ由来のエタノールと遜色ないレベルまで、価格を引き下げられる見通しだという。

 エタノールの世界市場は年11兆円規模とされる。だが、積水化学が見据えるのはさらに先だ。

 炭素数が「2」のエタノールを脱水反応させると、同じ炭素数を持つエチレン(C2H4)になる。このエチレンはポリエチレンやポリ塩化ビニールなど各種のプラスチック材料となり、ここからさらに約2万種類の製品が生み出される。これらは自動車部品や電子材料などとして、世界の産業界に必要不可欠な存在だ。

 エチレンだけではない。使用する微生物など条件を変えて、炭素数が3つの「イソプロパノール」や5つの「イソプレン」を製造できれば、生み出せる化学品の幅はもっと広がる。積水化学は既にその研究にも着手している。

輸入に頼らず日本国内で循環させる
●エチレンを出発物質とした様々な化学品

1000億円事業に育成する

年30カ所の更新需要を狙う
●積水化学のバイオリファイナリー事業の展望

 国内ではこれまで、主にナフサからプラスチックを製造してきた。ここで使われる年間約3000万トンのナフサをゴミで置き換えるだけでも、経済効果は莫大だ。国富の流出を抑制できるうえ、エネルギー安全保障の面でも有利に働く。

 さらに技術が進化すればゴミ由来の都市油田を活用して、日本が化学品の輸出国になることも夢物語ではないだろう。化学品全体で見ると、世界市場は50兆円を超える。

 二酸化炭素(CO2)の排出量を大きく減らせるのもメリットだ。ゴミに含まれていた炭素をエタノールという形で再利用できるのに加え、製造時やゴミ焼却時のCO2排出も抑制できる。

 今後の課題は、ゴミの回収を担っている自治体との連携だ。日本にはゴミ処理施設がおよそ1200カ所あり、毎年30~40カ所で設備が更新されている。処理施設の更新時期に合わせて、エタノール化施設を併設できるかどうかが普及のポイントとなる。

 積水化学は19年度にも初の実用プラントを稼働させる計画だ。その際、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式で自治体やプラントメーカーも巻き込み、費用を分担するスキームを思い描いている。エタノールなどを売って得た収入を出資者でシェアすることで、自治体の設備投資負担を軽減できるとしている。

 積水化学はバイオリファイナリー事業の売り上げを25年に100億円、34年ごろには1000億円とする計画を描いている。平成の次の時代に、ゴミを本当に資源として生かせるか。積水化学の底力が試されている。(坂田 亮太郎)