そのうえで既存特許などが活用できるため参入障壁が比較的低いとされる電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車 (PHV)分野を最優先に、官民を挙げて研究開発を強化する。次世代の自動車技術で優位性や業界スタンダードを確立できれば、部品産業の技術進歩も見込まれ、それが自動車産業の競争力の向上につながる。たとえばEVの場合、バッテリーやモーターなどの基幹部品でこれまで以上に国産化を促すほか、貴金属資源の保有、関連特許の出願、NEV技術の蓄積などの面でも日米欧に遜色ない条件が整ってきた。

大手の一角、比亜迪(BYD)のPHEV「宋」
大手の一角、比亜迪(BYD)のPHEV「宋」

補助金に加え、メーカーの生産義務や保護政策も

 政府は本格的な普及に向けて「3本の矢」を放とうとしている。

 1本目の矢は補助金だ。政府は民族系NEVメーカーが立地する都市をモデル地区として指定したうえで、13年からNEV補助金支給制度を始めた。支給額は13年~17年の5年間に約1900億元(約3.2兆円)とNEV市場を育成する起爆剤となっている。各地方都市もメーカーに補助金を別途支給し、地元でのNEV販売を支援する。

 17年中国NEV販売台数で首位の「北汽ECシリーズ」(定価は15.8万元=約266万円)の場合、国・地方都市の補助金、メーカーからの補助金を控除した消費者の負担額は6万元となり、ガソリン車と十分競合できる水準となっている。補助金と並行する形で、新エネルギー車に対しては購入税の免除、ナンバープレート発給規制の緩和、充電スタンドの整備なども実施し、需要を刺激する。

 2本目の矢は供給先であるカーメーカーに対する17年9月発表の「双積分政策」。分かりやすく言えば、罰則付きのNEV生産義務で、たとえばカーメーカーはガソリン車を100万台生産するにはEVなら約3万台、PHVなら5万台を生産する必要がある。生産義務が未達成のメーカーは他社から生産枠の購入をしなければならないことから、各社はNEVシフトを急いでいる。

 3本目の矢は地場の部品メーカーの育成を目的とする産業保護政策。NEV製造コストの4割超を占めるリチウムイオン電池(LIB)は、外資系企業の参入が補助金支給条件や生産能力の引き上げなどによって厳しく規制されている。

 中国でNEVの補助金を受けるためには、搭載するLIBが政府によって認定されたメーカーから供給されることが義務付けられる。15年に中国工業情報省が発表した「汽車動力蓄電池行業規範条件」では、その対象として民族系LIB関連メーカー57社を「ホワイトリスト」に認定。生産条件は厳しくパナソニックですら、新規参入しづらい。一連の国内メーカーへの保護策により、17年に補助金を受けたNEV車が乗用車404車種あるうち、民族系が95%を占めた。

 3本の矢により、民族系メーカーは相次いでNEV生産・販売に乗り出している。バス・商用車を含む中国のNEV販売台数は13年の1.7万台から17年の77.7万台に急速に伸びている。NEV乗用車販売台数は17年に57.9万台と世界全体の約5割を占める規模にまで増加している。世界のNEVメーカートップ10には比亜迪(BYD)や北京汽車など民族系4ブランドがランクインしている。

17年のNEV世界販売トップ10ブランド
ブランド名 台数(万台)
BYD(中) 10.9
北京汽車(中) 10.3
テスラ(米) 10.3
BMW(独) 9.7
シボレー(米) 5.4
日産(日) 5.2
トヨタ(日) 5.1
栄威(中) 4.5
VW(独) 4.3
知豆(中) 4.2
(出所)EVSalesより作成

次ページ IT大手の投資先3社に大きな成長可能性