「水戸黄門型アクション」の偽物が増える?

 最終報告の再発防止策では「経営幹部が国内外の複数の事業所・拠点を定期的に回り、社員に直接語りかける」としています。これは従業員と経営陣との距離を縮めるための水戸黄門型アクションといえます。しかし、報告書の不透明さや報道の姿勢を正さない限り格差は消えず、ニセ黄門が増えるだけです。

 昨年の神戸製鋼事件の一連の報道からは、「経営者は真面目によく頑張っている」という印象を受けてきました。

 しかし、同社のリリースや最終報告に現れていない部分から浮かび上がるのは、印象操作に長けた不気味さです。同社に求められているのは印象ではなく、数値に裏付けられた信頼のはずです。その意味では非常にもったいないことをしました。

最終報告の謎(3)再発防止策の実効性が未知数

 次に、最終報告が打ち出した再発防止策をいくつかの視点で考えます。

 最終報告の再発防止策では、品質憲章を定め、取締役会の構成を見直すなどガバナンスレベルの改革案が打ち出されています。具体的には独立社外取締役の構成比を3分の1以上(5人)に増やすとか、「指名・報酬委員会」を設置するといった内容です。この委員会の体制は示されておらず、監査委員会の3人が社外取締役であることと、取締役の構成比からみて、社内出身取締役が支配力を保つ委員会になる可能性が高いように感じます。したがって実質的なガバナンス改革が進むのかについてはほとんど未知数です。

 わからないのは、このようなガバナンス改革がデータ改ざんの防止にどのようにつながるのかという点です。繰り返しになりますが、最終報告で経営陣の責任が記されていないこと、経営の圧力がどの経路で不正の現場に伝わったかが解明されていないからです。

3つのディフェンスラインは機能するか?

 次に、執行部門での再発防止策をチェックしてみましょう。その時に欠かせない考え方が「3つのディフェンスライン」です。

 第1のディフェンスラインは、現場レベルでのリスクマネジメントを意味します。たとえば、製造部署での品質検査が第1のディフェンスラインです。

 第2のディフェンスラインは現場と独立な立場でリスクマネジメントを行うことです。たとえば、工場で作られた商品の品質や性能は検査部署でチェックしますが、この検査部門が第2のディフェンスラインになります。第1と第2の違いは、業務リスクをとっているかどうかで分かれます。

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