神戸製鋼所の新社長に4月1日付で就任した山口貢新社長は、「神鋼が変わったと言われるよう不退転の覚悟で取り組みたい」と、品質データ改ざんで失墜した信頼の回復に努めることを宣言した。(写真:ロイター/アフロ)

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最終報告の謎(2)経営責任を不透明なままにしている

 前回は、神戸製鋼所の不正事件に関する最終報告が残した謎の1つ目を取り上げました。今回は、あと2つの謎を取り上げます。

 最終報告の公表に合わせて、社長と担当副社長の引責辞任が発表されました。しかし最終報告では現経営陣や過去の経営陣と監査役の責任について説明していません。この点でも社会通念上期待される説明責任を果たしているとはいえず、社長の辞任という結論には不透明感と唐突感が免れません。前回の表に記したように本件は1970年代から続いている問題であり、過去の取締役には不正の実行者もいます。現経営陣も過去の経営陣も責任は同質だからです。

 また1972年以降、神戸製鋼の社長は11人が務めているので、社長の在任期間は平均4.2年です。現社長は就任5年目で、ちょうど代替わりの時期です。このタイミングでの辞任を実質的な引責といえるのでしょうか。

「現場の妨害行為」はプレス発表したのに、役員になった不正実行者の発表はなかった

 暫定報告と最終報告では、長府製造所のアルミ押出工場で自主点検に対する妨害行為があったため、外部調査委員会による調査を開始したとしています。さらに「当社グループの品質自主点検における妨害行為について、2017/10/20」というプレスリリースを出し、厳正に処分するとしています。

 一方、最終報告では昔のデータ改ざんの実行者がその後専務や副社長に昇格し、不正について取締役会に報告していなかったとしています。同社はこの件をプレスリリースしていないようですが、従業員の妨害行為に比べてプレスリリースに値しないことなのでしょうか。経営と現場との距離というよりも、地位の格差を感じてしまいます。

 過去に船場吉兆(2008年廃業)が2007年に商品の賞味・消費期限を偽装していた問題で、当時の専務が「パート従業員の独断」と責任転嫁した発言を思い出してしまいました。