内田:だけど今の時代、これだけ成熟化して、日本のマーケットが成熟化していると業界の中でほかと同じことをやっていたら絶対に生き延びられないので、個性を出さなきゃいけない。だけど業界内で横並びの意識が強いから、その個性を出すのがあんまり得意じゃない。

 逆に言えば、日本を代表する産業になっている自動車業界って、さっきおっしゃったトヨタとかホンダって、私から見るとすごい個性がありますよね。どっちの個性がいいとか、悪いとかじゃなくて。

日立製作所の川村隆・相談役

川村:自動車会社が飛行機を作るなんていうのは、本当に個性があると思いますよ。横並びではなく個性を出すという意味で我々がやったことといえば、2009年にテレビを止めると決心したことなんですよ。

 欧米企業は撤退しているのに、日本の電機メーカーはみんな横並びでテレビを作り続けていて、会社の中でも日立がテレビを作るのを止めるというだけで大変な変化だったんですよ。

 だけど、客観的に外から見れば日本でいつまでテレビを作っているんだと、問題意識を持つのは当然。それなのに日立は2009年になってようやくそういう決断したし、ほかの国内電機メーカーはテレビやめるのにさらに何年もかかりましたよね。

 やはり横にらみは続いていたし、大きな変化を嫌うという日本的なメンタリティーがあったよね。だから、自動車メーカーが飛行機を造るぐらいの大きな決心をやるのも大変化ですが、逆にテレビを止めるぐらいでも大騒動だったんですよね。こういう決断ができない日本企業は、やはり相当遅れていると言わざるを得ない。

内田:それは、多くの日本企業に共通している課題ですね。まだテレビを作っている会社は多いですよね。

電機各社は横並びでテレビや半導体を作り続けた

川村:半導体も同じです。今にして思えば一番良かったのは、例えば半導体はNEC一社に集めますとか、テレビはソニーに集約しますとかやればよかったのかもしれない。みんなで日本の会社を1事業1社ぐらいに集約して、そうしたら半導体を集約した会社は投資をすべて半導体に投入できるようなる大会社になったはず。事業ごとにそういう集約会社をいくつもつくればよかったんですが、複数の電機メーカーで少しずつ同じ事業をやっているものだから、韓国勢に負けちゃった。

内田:やはり、川村さんが横にらみでなく大胆な改革をできたのは、川村さんが一度、日立の本体から外に出たことで客観的に問題を見られるようになったからなんでしょうか。それとも、単に川村さんが変わり者だったのか、あるいはそこまで追い込まれちゃったのか。何で2009年まで日立ができなかったことを、川村さんだとできたんですか。

川村:私が一度、日立本体を辞めた人だったというのは大きいと思います。