
日本のスポーツ産業を盛り上げるべく実現した、文部科学大臣の馳浩氏と元プロ野球選手の松井秀喜氏の対談(前回の記事はこちらから)。今回はその第2回目をお届けする。
文科省が初めて開催するスポーツや文化そしてビジネスに関する国際会議「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム(以下ワールド・フォーラム)」。同イベントを主催する側である馳大臣と、そのフォーラムのアンバサダーに指名された松井氏。二人の話は時間がたつほど熱を帯びていった。そして話題は2人の元アスリートの“原点”にも触れていった。
(司会は藤沢久美・文部科学省参与)
馳:僕は高校生や大学生のころ、スポーツで頑張ったら何かが得られると考えていました。高校で日本一になったらアメリカ遠征に1カ月行ける。頑張れば大学に特待生で入学できる。大学でしっかり勉強すれば教員になれる。そして念願だったロサンゼルス・オリンピックに出場できました。頑張ったら成果が得られる、ずっとそういう考え方でした。
オリンピックが終わった後、母校の星稜高校で教員をしていたのですが、次の目標をどうしようかと考えていたときに、こんなことが頭によぎったのです。「自分自身のスポーツとの向き合い方は、このままでいいのか?」。
誰よりも頑張ろう、ライバルより頑張ろう、ずっとその気持ちで生きてきました。でも、それとは違うものがあるんじゃないのかと思ったのです。
ロスオリンピックである出来事がありました。私の試合会場はアナハイムのコンベンションセンターでした。ちょうどディズニーランドの前です。アメリカの1万人近い観客の前でルーマニアの選手と試合をしたのですが、日本や私と全く関係ない人がものすごい声援をくれたのです。負けたらブーイングもありましたが、「頑張れよ!」と声をかけてもくれた。それが凄い心地よかったんです。オリンピックってなんかいいな、そういう印象が残っていて、帰国した後に、12月のボーナスを全部使い果たしてシアトルに行きました。オリンピックで知り合った友達に会いたかったのです。
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