山下:私が大阪から東京に出てきたときに、自分たちのような会社は絶対に大資本で、大きなアセットを持っている企業と一緒に仕事をすべきだと考えていました。特に、高度経済成長期に線路を伸ばして街を作っていった鉄道会社は、人口が減っていく時代に入ったときに新しい変化を目指すはずだ、そこに我々が提供できる価値があるとの思いが強かったんですね。

 一口に鉄道会社といっても、線路の長さが長い会社は多くあると思います。ただ、東急さんは先ほどの渡邊専務のお話のように、街の価値を高めることに重きを置かれています。それはリノベーションを手がける私たちにとっても共有する重要な部分ですので、そこでチャンスがあるだろういう気持ちはありましたね。

渡邊:繰り返しになりますが、我々はやはり、街の価値をどう高めるかというのが経営のメーンテーマなんですよね。電鉄会社だから、まあ鉄道会社であることは間違いないのですが、沿線に住んでいる方々、来訪する方々にとって、いい街であること、住んでよかった、来てよかったと思っていただける都市開発ですね。街のバリューを高めていくことが絶え間ない営みとして欠かせないという信念がありますね。

具体的には、今後どのような取り組みを進めていくのでしょうか。

渡邊:これから案件は色々と出てきますが、例えばある築古のビル物件をリノベーションして、1つはホステル、1つは東京と地方の交流の場、それを合わせた空間を提供できるようなプロジェクトを進めています。ホステルには実は可能性があって、海外から来られる方々のニーズも大きい。山下社長をはじめリノべるさんには様々なアイデアを出していただいて、築古のビルに新しい生命を吹き込みたいと考えています。

山下:東急さんが持っている古いビルをリノベーションし、新しい世代を呼び込むための「スイッチ」のようなものを探し出すこと、そして呼び込んだ後にその建物が魅力的であり続けるためのオペレショーンを回していくこと。こうしたことは我々が得意なところだと思っています。

 リノベーションの特長として、時間軸の短さというのがあると思うんですね。新築であれば3年、4年計画を練って建築するわけですが、環境の変化がよりスピーディーになっている現代では、計画している間に状況が変化してしまうリスクがある。一方、リノベーションでは1年あればビルを丸ごと新しくして、新しい価値を付加できる。その時代に合わせて柔軟にスピーディーに対応できるのはリノベーションの強みだと考えています。

 私がぜひ東急さんと一緒にやりたいなと思うのは、高齢化に対応した街づくりですね。これまで形作られてきた街には多く高齢化が進んでいるエリアもあるでしょう。例えば昔建てられたアパートにはエレベーターがなく、高齢者の方々には住みにくい状況が生まれているケースもある。他方、若い方々にとっては安くていい物件であれば、それほど苦にはならないですよね。リノベーションによって、そのアパートに新しい価値を吹き込んで、若い人に入ってもらう。そうした新陳代謝を繰り返せるような仕掛け作りを進めていきたいと考えています。

リノベーションは住居だけでなくオフィスなどにも活用が広がっている(リノベる提供)
リノベーションは住居だけでなくオフィスなどにも活用が広がっている(リノベる提供)

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