しかし、それも分かった上で、自分の手でがちゃがちゃ操作するのが好きな人がいる、ということじゃないでしょうか

大パワーのクルマはシフトフィールがよろしくない

多田:もちろん、自分の手でシフト操作を楽しむのは大事なことです。ただそうなると、スープラみたいな大パワーのクルマだと正直あまり楽しくない。一番の理由はですね、ミッションって、トルク容量をあげていくほどシフトフィールは悪くなるんです。

 いろいろやってみてわかったことは、86くらいのトルク容量が、シフトフィールの気持ち良さを求めるには限界で、それ以上容量をあげていくとフィールが悪くなる。無理やりに組めばギアの入りが悪くなるし、信頼性の問題も出てくる。MTを出すときっと86よりもシフトフィールが悪い、と言われることになると思うんです。だからMTを操作する楽しみを否定するわけではなくて、そういうクルマはすでに我々は86を用意していますよと。営業やお客さんの要望もあるし、もちろん準備は進めているんですけど、本当に必要なのかなというのは、正直な思いとしてはありますね。

ポルシェの911GT3にマニュアルのオーダーが殺到している、という話もありますけど。

多田:あそこまで希少性の高い高価なクルマは少し顧客の嗜好性が違うのかなと思います。実は真面目に、いつかはやりたいと思っているんですけど、マニュアルをつくるんだったら、レーシングカーのような(前後方向のシフトで変速する)シーケンシャルミッションみたいなものをやってみたいですね。

レーシングカーのドグミッションのようなものですね。市販車では「アバルト695ビポスト」が採用しています

多田:そう、いままでのHパターンのものを出しても新しい提案もないし、ああいうダイレクトなシフトフィールを一般のお客様にも味わってもらえるようなミッションというのは、トヨタがやる価値があると思うんです。

最後にこれから量産に向けての仕上げ段階だと思いますが、どんなクルマになりそうかを一言。

多田:限りなく妥協のない開発ができた、と思っています。普段使いにリラックスして乗っても楽しい。そしていざというときにはスイッチが切り替わるスポーツカーにしたいと思っています。

 詳細なスペックはまだ開示されておらず、市販車は来年の第1四半期の発売予定ということだが、トヨタ渾身の“ピュアスポーツカー”の登場を心待ちにしたいと思う。