一般道でたくさんテストをやりたいとなると海外に出て行くことになって、どうしても開発の時間的な遅れなども生じます。日本だけで開発するとなるとテストコースをメインに、最後に少しだけ公道テストをして終わりということが多い。今回はメインの実験場がフランスですから、そういう意味ではやりやすかったですね。

それで、多田さんが先程もおっしゃっていたポルシェに負けないクルマになったと。しかし、あらためてポルシェって何がすごいんだと思われますか?

インテリアにはパドルシフト付きステアリングホイール、ダッシュボードには後方確認モニターも備わる

ポルシェは「先刻ご承知」のメーカー

多田:ポルシェ以外にももちろんいいクルマはたくさんあります。でも芸術品のようなものとか、それぞれの価値が違う。僕は工業製品のスポーツカーを作りたい。そういう価値で見ると圧倒的にポルシェがすごいわけです。真似をしたいとかそういうことではなくて、なにか困ったときにポルシェを調べてみると、そこに必ず答えがある。本当によく考えてあるんです。

それって、多くの人がハンドリングの良さとか、エンジンの気持ち良さとかをいいますが、そういうことではなくて。

多田:それはみなが思っていることで、そういうことだけじゃないんです。スポーツカーなんだけど、備えていなければいけない最低限の安全性とか、電子制御のあり方とは、とか、そういったことが参考になる。たとえば、アクセルとブレーキの踏み間違えが問題になりましたけど、マニュアルのスポーツカーでヒール&トゥをやりたいとなると、アクセルとブレーキペダルの配置はどうしても近くなる。そうすると踏み間違えが発生しやすくなる。ヒール&トゥってある意味では意図的に踏み間違えているようなものですから。トヨタの社内ルールでは「なるべくペダルは離しましょう」となっている。

多田:じゃあどうするんだ? 86の発売前の話ですけど、ポルシェを調べると、アクセルとブレーキを同時にどんと踏むと、エンジンパワーが下がるようになっている。ブレーキを踏みながら、アクセルをあおると、ちゃんと回転があがる、「おお~、ちゃんと制御されているんだ」と。今でこそどのクルマもあたり前にそうなっていますけど、そんなこと疾うにお見通しだと、そういうことが多いんですね。

ヒール&トゥの話が出たのでついでに、MTの設定はあるんですか?

多田:実は海外メディアからもすごくたくさん質問を受けて、いま検討中です。逆にみなさんにも聞きたいんですけど、MTって必要ですか? いまの時代のATってとてつもなく進化をしていて、このスープラ世代のものは、今よりももう1つ先のレベルにいっている。いまのDCTも勝てないくらいのところにあります。速さという面ではもはやMTのアドバンテージはないし、軽さの面でも同じです。マニュアルのほうが耐久性があって長持ちするという人もいるけど、それもありません。