多田:といってもLMGTEに出ることを決めたわけではなくて、なぜそうしたのかと言えば、量産車ベースのレースカテゴリーをいろいろ調べてみると、LMGTEが一番モディファイの範囲が広い。外観や構造なども、どういうアップデートをすれば速く走れるのかを事前に検証しておくと、量産車をこうすればレースカーを作るときにうまくできるねと、そういうことがわかってくる。量産開発が終わって、あとになってレースカーを作るとなると、モディファイに時間もお金もかかるし、販売価格も高くなるからカスタマーも広がらない。

 これまでトヨタのクルマ作りではそこまで考えていなかった。でもポルシェの車両などを詳しく見ればあたり前のように考えてあって、そういうことをまずちゃんとやってみようと。それがレース仕様を作りこんできた一番の理由ですね。

たしかにポルシェをはじめ欧州メーカーの多くは、市販車とレース仕様の開発を同時並行で進めているところが多いですね。量産車とレース仕様が同じラインで流れているメーカーもあると聞いたことがあります。

2人乗りで割り切ることができたワケ

多田:それで、先程からピュアスポーツといっていますが、今回大きく割り切ったのが、2シーターにしたことです。

ビジネスとしては、4シーターにしたほうが成立させやすいはずなのに、あえて2シーターを選んだと。

多田:なぜ2シーターにしたのか。BMWって、一般的に走りがいいと言われているメーカーで、たとえば特別なサスペンション形式や、評価の仕方があるとか、とてつもない開発ドライバーがいるとか、何かその鍵となる秘密があるはずだと思っていました。役員にもよく聞かれましたけど、一緒に開発をやってわかってきたのが、そんな単純なことだけでクルマはよくなったりしないんじゃないか、ということです。

たしかに我々も、BMW流の秘密のレシピがあるんじゃないかと思ってました。

多田:先程、彼らは図面の段階からすごくエネルギーを使うと言いましたが、分かったのは、クルマの走りなんてものは、ホイールベースとトレッドを決めた瞬間にほぼ8割9割は素性が決まってしまうということです。

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