多田:それは、やっと今になってですね。ちょうど量産に移行する準備をはじめたフェイズなんですけど、ここにきてようやくいろんなことが紐付いてきた。最初の4年間くらいは「???」ってことだらけで。

BMWのほうではオープンモデルになる予定。これがデザイン試作車の「BMWコンセプトZ4」
BMWのほうではオープンモデルになる予定。これがデザイン試作車の「BMWコンセプトZ4」

なにか具体的な例を挙げられますか?

多田:山のようにありますが、まだあまり話しちゃいけないって言われているんですけど(苦笑)。たとえばトヨタでは設計図面を、まずラフを書いてそれをもとにテストをして、次は工場での生産の要件もいれた図面を書いて、発売するための要件を入れてみたいな段階で進めていくんですけど、彼らは我々の倍くらい書くんです。

BMWはトヨタの倍、図面を書くと?

多田:試作車やバーチャルでシュミレーションをやるための図面なども含めての数ですけど、最初から異常に購買の精度が高い。いきなり言われたのが、1台分の部品をすべて決めろと。例えばリアのコンビネーションライトで、まだデザインも決まっていない段階ですよ。そこに入る部品とその配置ぜんぶを決めて、どこがバックアップランプになるかすぐに決めろって言われて。

BMWは「精度の高い試作車」を作る

まだデザインが決まっていないのに?

多田:「何を言ってるんだ? 決めるのはいいけど、デザインが決まってからじゃないと無駄になる。トヨタでは、将来やりなおしが発生しそうなことは一番嫌うし、なるべくそういうことはやらない」。そう説明しても、やっぱり要求されるんです。そこでいろいろ決めたんですけど、いまになってその理由がだんだん分かってきた。そういったことがリアライトに限らずいろんなところにある。

それってどういう意図があるものなんでしょうか?

多田:たとえば「試作車でテストしたときはけっこう性能がよかったけど、量産の工場でつくると何かが違う」とか、そういうケースってよくあるんです。でもそれが(BMWのやり方だと)限りなく少ない。

 最初は、一見無駄に思えることをやっているけど、ものすごく精度の高い試作車ができるんです。やり直しをすることがわかっていても、大事なところの部品はいきなりわざわざ型をおこして作るんです。それによって結果的な手戻りは少なくなるし、最終的な性能の予測ができるというメリットもあるんです。

そのやり方で最終的にトヨタが想定したコストと同じになるんですか?

次ページ レース参戦を前提にするとどうなるか