多田:スープラってすべてのジェネレーションで直6エンジンなんです。ターボのありなしはあっても例外なく直6です。先代の80のチーフエンジニアの都筑(功)さんは僕のクルマ作りの先生で、折に触れて80スープラの話をしてくださいました。そんなことをいろいろ考えながら、直6のエンジン、そしてFRのレイアウト、この2つは外せないと。これを変えたらスープラとは呼べないなと思ったわけです。
なるほど、スープラとは直6エンジンでFRのスポーツカーだと

多田:それで、会議の場でせっかくトヨタとBMWが組んでスポーツカーを開発するのだから、ポルシェにも負けないピュアスポーツを一緒に作りたいと言ったら、その場にしら~っとした空気が流れて。
「なに言っているんだ。俺たちは走りの性能でポルシェに勝とうなんて思ったことは一度もないし、コンフォート性能でメルセデスを凌駕しようと思ったこともない。そんなにポルシェが欲しいなら、ポルシェを買えばいい。BMWの社員でもポルシェに乗ってるメンバーはたくさんいる。でも我々のカスタマーはそれを望んではいない」って、ターゲットがものすごく明確なんですね。彼らとしては「BMWのお客様はピュアスポーツカーが欲しいわけではなくて、ラグジュアリ性とスポーツ性がバランスしたところに価値があるんだ」と、一貫して言っていて。
スバルとの協業の比ではありませんでした
多田さんはこれまでにもいろんな場面で、ポルシェを目標にしてきたと話されています。ではBMWをどのように説得したのでしょうか。
多田:で、僕らはとにかくピュアなスポーツカーが作りたいと。作りたいものが違うのであれば、まず互いにベストな条件を考えるのが先だと。そこから構成をもちよって、互いに使えるものを見定めようと。それはすごく新鮮な意見でしたね。
そしてピュアに走りを追求した、看板になるようなモデルの大事さを訴えつづけていると、だんだん彼らにも熱意が伝播してきて、「我々のクルマはさておき、おまえたちがそういうことをやりたいなら、本気で協力してやる」って。そこから何をどうすればいいのかっていう本質的な議論が進みはじめたんです。
しかし、当たり前だと思いますが、企業文化も国籍も違うわけで、そこを理解する難しさは相当あると思いますが。
多田:もちろん、スバルとの協業のときも随分違って最初は驚いたわけですけど、そのときの比じゃないくらい色んなことが違っていて、なんでこんなことやっているのか意味が分からない、ということもたくさんありましたね。
それはあとになってその理由が分かったんですか?
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