トヨタとBMWが燃料電池車やスポーツカーの開発で提携を発表したのが、2011年12月のこと。そして、2012年の6月には、BMWはカーボンを使って車体を軽量化する技術、トヨタはハイブリッド技術の供与などで提携拡大を発表している。まさにこのころ、スープラに繋がる話が動き始めていたということだ。
多田:まず前提として、86をどうしてスバルと一緒に作ったかというと、みなさんもよくご存知のようにスポーツカービジネスは厳しい。台数だって売れないし、汎用性の低いマニアックな部品も作らなくちゃいけない。開発費用ばかりかかってリターンは少ない。だから86とBRZは、バッチなどは変えてありますが基本的には同じモデルです。
今度のBMWとの共同開発も、最初はそういうものだと思っていたんです。ところがいろいろ話をしていくと、「おまえたちの作りたいものは一体なんなんだ」と、そういう話になってきた。
なるほど、根源的なところを問われた。
86の登場で、スープラが欲しいという声が盛り上がる
多田:スポーツカーを作る上で、FRにするのか、ミッドシップにするのか、いろんなチョイスがありました。そうした中で86のファンからのフィードバックが一番大きくて、あれを世に出したことで世界中の眠っていたトヨタファンから声が寄せられるようになった。中でも圧倒的に多かったのがスープラの復活を期待するもので、特にアメリカのマーケットからは熱い声をいただいた。ファンミーティングにも話を聞きにいきましたけど、これはすごい世界だなと。
それから「86が戻ってきたことはうれしいけど、ちょっと物足りない」という意見も意外に多くありました。昔からの86やスープラのファンは、もうそれなりの年齢になっていて、社会的な立場や金銭的な余裕もあるけど仕事も忙しいし、チューニングばかりもしていられない。「もう少し高くてもいいから、ぽんっとつるしを買ってきて楽しめる高性能なモデルがほしい」と。新しいスープラはそういう人にぴったりなクルマだと思います。
多田さんの考えるスープラの定義って何でしょうか?
多田:昔のリバイバルをやる気はなかったんです。やっぱりいまのテクノロジーで、時代にあったものを作りたい。でもスープラであるためには何が必要なのか。たくさん考えたし、話を聞きもして、それでたどりついた条件が、2つだけあって……ちなみにこれで第5世代になるんですけど、型式が40、50、70、80ときて、これが90なんです。
それでショーカーのゼッケンナンバーが90なんですね
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