「ISO400万」で暗闇くっきり

 肉眼では漆黒の闇にしか見えないアフリカのサバンナ。徐々にデジカメの感度を上げていくと、草や木が見えてくる。走り込んできたシマウマもカラー画像でくっきりと映る──。

超高感度イメージセンサーを搭載したキャノンの多目的カメラと、撮影した画像

 ソニーと同じく、CMOSイメージセンサーの高性能化を突き詰めているのがキヤノンだ。同社が2015年12月に発売した多目的カメラ「ME20F-SH」は最新のイメージセンサーを搭載し、最大ISO400万相当の高感度を実現。「0.0005ルクス以下」という、星しかない夜空より格段に暗い闇夜でも、カラー動画の撮影が可能だという。「ISO400万相当の感度を実現したCMOSイメージセンサーは、おそらく世界初。ダントツの機能や特徴を持つセンサーの開発で違いを出していく」。キヤノンの市川武史・半導体デバイス要素開発センター所長は意気込む。

 これまでキヤノンは、自社製デジカメ用にCMOSイメージセンサーを開発・生産してきた。ところがカメラ市場は縮小が続き、従来路線を維持するだけではスマホ向けなどに強いソニーなどとの差を縮められない。そこで、超高感度に特化するなど、特徴あるセンサーで新たな用途を模索する。

 キヤノンが2015年、監視カメラ世界最大手のスウェーデンのアクシスコミュニケーションズを約3300億円で買収したのも、その一環。監視カメラに加え、海中撮影や天体観測など、多目的に使える独自のイメージセンサーを開発していく方針だ。

IoT時代の重要なセンサーに

 次の課題は、イメージセンサーに「認識技術」を搭載すること。画像を記録する「目」の機能に加え、撮影したモノの状態を把握できる「頭脳」への進化が期待されている。

 ソニーは2015年10月、ベルギーのベンチャー、ソフトキネティックシステムズの買収を発表した。イメージセンサーを使い、撮影した対象物までの距離を測定できる「測距技術」が強みだ。

 従来のイメージセンサーに測距技術を組み合わせることで、クルマの自動運転やドローンによる空撮、3D地図作製などでの利用に大きな進化をもたらす見込みだ。

 近い将来、自動運転車がイメージセンサーの主要な用途として急浮上する。事故を防ぐには、多数のイメージセンサーで周囲の状況や障害物までの距離を的確に把握することが不可欠だ。ソニーは既に、車載カメラ分野への参入を発表。自動車メーカーなどとの議論を始めており、耐熱性や感度などを強化した車載用イメージセンサーの評価や改良を進めている。キヤノンも「車載カメラ市場への参入を検討している」(市川所長)。

 ガートナーの予測では、CMOSイメージセンサーの市場拡大が続く。2015年時点は99億ドル規模のCMOSイメージセンサーの世界市場は、2019年には136億ドルに拡大する予測だ。

 社会インフラの高度化や自動運転など、IoT(モノのインターネット)の本格普及で、イメージセンサーの用途はさらに広がる。肉眼を超えた機能を持つイメージセンサーが活躍する場面は、格段に増えていく。

(日経ビジネス2016年1月18日号より転載)