古くから人々が親しんできた「香り」は、数十万種類あると言われている。研究が進んだことで、疲労抑制や空気の浄化などにも効果があることが解明されてきた。効能の表示など、今後は製品化に向けた課題も注目されることになりそうだ。

グレープフルーツの香りには疲労抑制効果
●人間の嗅覚と香りを認知するメカニズム
嗅覚受容体は約400種類
におい分子が嗅細胞に届くと、嗅毛の先端にある嗅覚受容体が分子をキャッチ。におい分子の化学信号が電気信号に変換され、脳が異なる香りを識別して認識する。受容体の活性化により様々な効能が得られる可能性がある

 私たちの生活と切っても切り離せない「香り」。カレーやワインなどの食飲料はもちろん、化粧品やシャンプーといった日用品にまで備わる香りは、世の中に数十万種類あるとされる。

 古代エジプトでミイラに使われた消臭技術に、欧州で古くから親しまれてきた香水やアロマテラピー──。人類は香りの持つ「効能」を数千年前から扱ってきた。近年は、嗅覚や香りのメカニズムの解明が進み、その効能を積極的に活用しようとする動きが広がる。

 「グレープフルーツの香りを嗅ぐと疲れが癒やされる」というのは、今では広く知られる香りの効能の一つだ。これを科学的に解明し、商品化への応用を目指しているのが花王。同社感性科学研究所と、疲労研究の第一人者である大阪市立大学大学院の渡辺恭良特任教授らが共同研究で成果を上げている。

 まずは嗅覚のメカニズムから見ていこう。嗅覚は、味覚と同様に「化学感覚」と呼ばれ、空気中に漂う分子化合物(におい分子)を脳が刺激として認識する仕組みになっている。

 上の図のように、鼻から吸い込まれたにおい分子が鼻腔の上部にある嗅上皮の嗅細胞に届くと、嗅毛の先端にある「嗅覚受容体」がにおい分子をキャッチする。嗅覚受容体には凹部があり、におい分子がこの凹部にはまり込むとその化学信号が電気信号に変換される。この電気信号が最終的に脳の眼窩前頭皮質に伝達されることで、脳が「○○のにおい」と認識する。

 人間の嗅覚受容体の遺伝子は約400 個あるとされる。1つのにおい分子は複数の受容体の凹部と結合し、1つの受容体は複数のにおい分子と結合できる。そのため受容体の数が約400個でも、どの受容体とどの受容体が結合(活性化)したかの組み合わせで、数十万種類の香りを嗅ぎ分けられるという。