セダン販売の低迷が市場成長の足枷

 近年都市部では、自動車需要もかつてのセダンへの一極集中を脱し、若者層やファミリーを中心にSUVが人気を集めている。ファッション性や悪路走破性といった実用性以外の特徴が評価された結果であろう。

 実際、17年の販売台数では、乗用車市場の主役であるセダンが小型車減税策の恩恵を受けたにもかかわらず、マイナス成長(2.5%減)に転じた。SUV市場は前年比13%増で、初の1000万台規模に達し、乗用車に占める割合も44%(12年には13%)に上昇している。

 当面、SUV需要は増加し続けるものの、直近5年間の販売台数平均伸び率(42%)を勘案すれば、減速傾向も出始めたといえよう。

 一方、ハイエンド消費を代表する高級車販売は17年に前年比17%増の約260万台で2年連続の世界首位になっている。消費嗜好の多様化に伴い、高級車の安全性やハイテク性能、ブランドのコンセプトに憧れる若年層も増加しており、特に欧米ブランドの中国生産拡大や、低価格戦略により、高級車市場の拡大を後押している。

 また、都市部における自動車保有台数の増加や、大気汚染の深刻化等への対策として、中国政府はガソリンと軽油に対する「国5」基準(欧州基準「ユーロ5」に相当)を17年に導入し、貨物車国家標準の改訂や過積載車両の取り締り(罰則付き)を実施したことが、中・大型トラックの買い換え需要が急増し、17年のトラック販売台数は、前年比16.9%増の363万台を記録した。

中国自動車販売のカテゴリー別明暗(万台)
カテゴリー別2017年前年比
乗用車2471.81.4%
うち:セダン1184.8-2.5%
SUV1084.313.3%
MPV185.7-16.5%
クロースオーバー49.5-20.1%
商用車416.114.0%
うち:トラック363.316.9%
2887.93.0%
出所:中国汽車工業協会より作成

両刃の剣である小型車減税、需要前倒しによる競争激化へ

 17年で終了した小型減税策は、自動車市場の活性化にカンフル剤的役割を果たしたといえる。同政策は、排気量1.6リットル以下の小型車に対し、車両価格の10%に相当する購置税を15年10月~16年末に5%、17年に7.5%に引き下げ、自動車消費の喚起を図った。

 小型車販売実績をみると、減税策実施前の月間平均が約109万台に対し、実施後は約145万台となった。ターボチャージャーエンジン搭載率の向上(排気量の小型化効果)による小型車販売増を除くと、減税後の2年3カ月間では、約700万台の小型車販売増に寄与したと推測されている。

 中国政府が小型車取得税(過去の2年3カ月間で約25億人民元)を免除する代わりに、足元の市場成長を最優先する方針が見受けられる。一方、政策による消費喚起は両刃の剣であり、需要の前倒しによる新車市場の減速や、生産能力の過剰及び価格競争などが懸念される。

 消費志向や環境規制が市場拡大の促進要因となれば、生産能力の過剰が市場拡大の足かせ要因となるだろう。中国には生産実績があった乗用車メーカーは84社あり、年間生産台数が5万台以下のメーカーは34社であった(17年末時点)。

 乗用車各社の生産計画を合わせると、20年の生産能力は4600万台に達し、市場需要比約3割超の過剰と推測できる。実際、乗用車の在庫圧力が強まっており、主要自動車メーカーが工場稼働率を維持するために、値下げに踏み切る動きが出てきている。

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