どの国であれ、「野心」なくして資本主義は発展しない。マックス・ウェーバーは「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で、勤倹貯蓄による資本の蓄積が資本主義の原動力になる過程を示した。ジョセフ・シュンペーターは「企業家精神」が生む「イノベーション」(革新)こそが経済発展をもたらすと分析した。さらに、「雇用、利子および貨幣の一般理論」を著したジョン・メイナード・ケインズは企業家の「アニマル・スピリッツ」が経済を動かすと考えた。

イギリスの経済学者、ジョン・メイナード・ケインズ(1883年~1946年)は、「雇用、利子および貨幣の一般理論(1936年)」の中で「アニマル・スピリット」の重要性を強調した(写真:Ullstein bild/アフロ)

「大志」でなくていい、小さくても絶やさぬ「野心」を

 いまの日本経済に決定的に欠けているのは、この「アニマル・スピリッツ」だろう。それは「血気」あるいは「野心」と言い換えてもいい。

 日本が米国だけでなく中国やドイツなどに比べて大きく立ち遅れているのは、若者の「野心」かもしれない。新興の情報技術(IT)企業が米国で次々に生まれるのは、時代の変化を先取りする若者の「野心」がそこにあるからだろう。

 就職活動を経て新社会人になった若者の多くは、「就職」より「就社」を選んだと思われる。どんな職業に就くかより、どんな会社に入社するかを優先したはずである。どんな仕事を任せられるかは、会社しだいということになる。そのなかで、どう「野心」を発揮するか。求められる仕事をきちんとこなすという人生観もあっていいが、それだけでは、すまない。枠を超えて「野心」を発揮することが、会社にとっても新社会人への本当の期待であるはずだ。

 「野心」を「意欲」と書き換えてもいい。それは「働きがい」さらには「生きがい」につながってくる。

 筆者は、高度成長時代に日本経済新聞社に入社した。幸い、「就社」ではなく「就職」だった。45年もの間、日本経済新聞記者であり続けた。日経退社後もジャーナリスト活動を続けていられるのは、幸運以外の何物でもない。ひとつ小さな「野心」があったとすれば、「昨日よりいい記者になりたい」と思い続けたことだろう。

 「大志」でなくていい。小さくても絶やさぬ「野心」がいずれ実を結ぶ日が来るだろう。



本格的に暖かくなり春も本格化、新年度の始まりです。この4月も、多くの学生が新入社員として羽ばたきます。大きな夢を抱きながら社会人としてスタートする一方で、同じぐらいに大きな不安を持っているはずです。そのような不安を少しでも解消すべく、NBOのコラムニストの皆様に、メッセージをいただきました。新入社員時代はどのようなアドバイスが身に染みたのか、そしてどのような心構えを持っているべきなのか――先輩の言葉をまとめました。

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