
沖縄県宜野湾市で2018年2月、第5回「日経アジア感染症会議」が開催された。同会議では、官民協力により人々の健康や経済活動を脅かす感染症への取り組みを進める必要性と有効性を確認するとともに、日本発の医薬品やワクチン、診断薬を感染症対策に役立てるための方策について検討し、国際的な感染症対策に対する日本発のシーズも紹介された。
マラリア対策に関して、新たな取り組みが進んでいる。日経アジア感染症会議が運営するアジア医療イノベーションコンソーシアム(AMIC)マラリア部会が2016年に発足し、検査・診断、創薬、予防(ベクターである蚊の対策)を日本発の製品でパッケージとして提供することを検討している。長崎大学の北潔氏は、「防虫剤処理蚊帳のオリセットネット(住友化学)と防蚊用塗料、殺虫剤と組み合わせたパッケージを提供することがマラリア撲滅に大切である」と話した。
マラリアの診断は、無症候性を含めたマラリア患者のスクリーニングが重要であることから、シスメックスは2017年から「フローサイトメーター法」の提供を開始している。治療薬についてはネオファーマから、現在開発中の「5アミノレブリン酸」が、近年耐性化が問題となっているアルテミンとの併用が可能であることが報告された。ネオファーマの河田聡史氏は「国内で症例数が少ないため、海外で治験を行う必要がある」と話した。
富士フイルムは、抗インフルエンザ薬である「アビガン錠」(富山化学工業)について、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者を対象とした企業主導臨床試験を2018年3月から開始することを明らかにした。一方、愛媛大学の安川正貴氏は「愛媛大学では2016年6月から、長崎大学および国立感染症研究所と共同でSFTS患者を対象とするアビガンの臨床研究を開始している。10名に投与したところ、重篤な有害事象は認められず、8名については速やかな白血球数と血小板の回復が認められた。うち2名は死亡したが、開始時からすでに多臓器不全に至っていたため、治療効果が得られなかったものとみられる」と報告した。
国立感染症研究所の西條政幸氏は「SFTSは2013年以降、日本で300例以上が報告されており、重篤化すると神経症状、出血傾向、多臓器不全などを呈し、致死率は約20%にも及ぶ。昨年は、SFTSに感染したイヌやネコなどのペットに噛まれて感染する例も報告された。今後は、迅速診断キット、抗ウイルス薬の開発を期待したい」と話した。
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