購買体験をデザインするフレームワーク

 このようなMUJI passportの開発経験を踏まえて提唱したのが「顧客時間」のフレームワークである。これは顧客時間に寄り添い、オンラインとオフラインの双方のチャネルによって、購買体験をデザインするためのツールである。

顧客時間のフレームワーク

 横軸は「時間」である。「選択→購入→使用」という、顧客の一連の買い物行動プロセスを示している。縦軸は「空間」である。企業が顧客に提供するチャネルが、オンライン・オフラインのどちらにあるのかを示している。中央には、その企業が戦略的に配置するチャネルのつながりと、どのような購買体験をつくるのかを俯瞰して描けるようにしている。

 単にチャネルをオンからオフへ、オフからオンへと移行させることに価値はない。顧客基点に立ち、提供する購買体験を思い描き、その実現のために自社が強みを持つチャネルを組み合わせることが求められる。そのような取り組みを進める企業こそが、顧客とのつながりを創り、強めることができるはずだ。

 まずはオムニチャネル化する顧客を捉えなくてはならない。その要点は「時間」「空間」「連携」の3つであり、それを整理するためのツールが「顧客時間」のフレームワークである。

アップルやグーグルよりイノベーティブなメガネ店

ワービー・パーカー

 本の中では、このフレームワークを全米注目のスタートアップ、ワービー・パーカー(Warby Parker)などに当てはめて解説している。

 ワービー・パーカーは、オンライン店舗を基盤としながらショールーム型店舗も展開するという、独自のチャネル構造を持っている。2015年にはFastCompanyという米メディアが発表している「世界で最もイノベーティブな50社」で、アップルやグーグルを抑えて、1位にランキングされた。いまや年間売上は1億ドルを超え、急成長を果たしている。