前回から読む)

 前回は、我々の著書『世界最先端のマーケティング』のタイトル決定までの裏話に走ってしまったので、今回は少しアカデミックな話から始めたい。何の話かというと、「オムニチャネル」と「顧客とのつながり」に関する論説である。

 フィリップ・コトラーは『コトラーのマーケティング4.0』の中で次のように述べている。

 「新しいタイプの顧客の特性は、マーケティングの未来がカスタマー・ジャーニー全体にわたってオンライン経験とオフライン経験のシームレスな融合になることを、はっきり示している」

 この指摘はどういう意味を持つのか、簡単に解説しよう。

変化したのは「店舗」ではなく「顧客管理」

 マーケティングにおけるチャネル論では、小売業におけるチャネル形態の変遷を以下のように捉えている。

 シングルチャネル→マルチチャネル→クロスチャネル→オムニチャネル

■チャネル形態の変遷
■チャネル形態の変遷
NRF MOBILE RETAIL INITIATIVE, 「Mobile Retailing Blueprint V2.0.0」より引用、筆者加筆
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 ここではそれぞれの説明を省略するが、シングルチャネルからクロスチャネルに至る過程と、クロスチャネルからオムニチャネルへの過程では大きな違いがある。

次ページ すべての「接点」がチャネルである