基板素材にも革新

 製法において、独自の工夫を凝らしたのが旭化成だ。2011年に買収した米クリスタルアイエスの技術を活用し、基板を窒化アルミニウムとすることに成功した。「非常にきれいな単結晶の基板ができ、発光材料との相性もよい。薄膜状になった発光材料の、内部の欠陥を大幅に減らせる」と久世プロジェクト長は胸を張る。

 深紫外LEDのミリワットあたりの価格は2~3ドルとされる。旭化成では基板の大口径化技術などで、来年には0.5~1ドル、将来的には0.25ドルにまで引き下げられるメドが立ったという。数千円で家電などに組み込める時代が迫る。

 旭化成は医療から住宅、家電用部品まで幅広い事業分野を持つ強みを生かし、深紫外LEDを普及させる戦略。2020年に100億円の売上高を目指す。

 ただし、窒化アルミニウム基板には課題も残る。「光取り出し効率が悪い」ことだ。窒化アルミニウムは屈折率が高く、LED内部で発生した光の大部分を平らな基板の表面で反射してLED内に閉じ込めてしまう。

 この問題を解決しようと取り組むのが、情報通信研究機構とトクヤマだ。世界最高出力となる90ミリワット超の発光出力を持つ深紫外LEDを開発した。まず上の写真のように、「フォトニック結晶構造」と呼ぶ数百nm単位の凹凸を基板表面に作る。そこに数十nm単位の微細な凹凸をさらに施す「ハイブリッド構造」とすることで、光取り出し効率を従来の約2倍に高めたという。

光取り出し効率を約2倍に高められる
●情報通信研究機構とトクヤマが開発した表面加工法
(写真=2点:情報通信研究機構提供)

 情報通信研究機構の井上振一郎・深紫外光ICTデバイス先端開発センター長は「(ハンコのように表面をプレスする)ナノインプリント法でハイブリッド構造を安価に製造できる技術も開発中」という。トクヤマは、今回の技術を組み込んだ深紫外LEDを来年度中にも製品化する予定だ。

 深紫外LEDの開発競争でリードする日本。勝利の方程式にどう結び付けるかが問われている。

(日経ビジネス2015年11月9日号より転載)