(写真=安倍首相:Carl Court/Getty Images、給料袋:maroke/Getty Images、お札と小銭と背景:F3al2/Getty Images)
(写真=安倍首相:Carl Court/Getty Images、給料袋:maroke/Getty Images、お札と小銭と背景:F3al2/Getty Images)
会社の実力から見て、日本の主要企業はどの程度賃上げする実力があるのか。「日経ビジネス」は3月12号の特集「給料はもっと上がる」で、日本の主要500社を対象に「賃上げ余力ランキング」を独自試算した。その結果の一部を公開する。

 ここ数年、企業は春闘で2%程度の賃上げを続けている。にもかかわらず、労働者の可処分所得は減少を続けている。社会保障費の負担増が主な要因だが、最近では生鮮食品、ガソリンなどの物価も上昇している。労働者の家計は苦しい状態が続いており、戦後2番目の長さとなった景気拡大の実感はないのが現状だ。

 企業はもっと労働者へ利益配分を厚くすべきではないだろうか――。このような問題意識から、本誌は日本を代表する主要企業がどのくらい賃上げ余力があるのか、独自試算し、ランキングした。ここでは上位27社を紹介する。

 賃上げ余力は、以下の5つのポイントを相対評価し、偏差値を算出した。

  1. 財務の健全性=「自己資本比率」「ネットキャッシュ(現金・預金などの手元流動性から有利子負債を差し引いたもの)」。財務面から見た賃上げ余力。
  2. 収益性=「ROE(自己資本利益率)」。賃上げの原資をどれだけ効率的に生み出せるか。
  3. 成長性=5期前と足元の売上高を比較した「売上高伸び率」。継続的な売上高の伸びは賃上げを続けられるかの判断基準になる。
  4. 労働者への還元度合い=人件費を付加価値(売上総利益)で割った「労働分配率」。従業員の退職給付引当金や役員報酬なども加味するため、単年だけで見ると特集要因による変動も多い。勘案するため、人件費と売上総利益に関しては、直近5期の平均値を算出し、労働分配率を計算した。
  5. 株主への還元度合い=1株配当を1株当たり利益で割った「配当性向」。

 このランキングでは、偏差値の高い会社ほど、賃金の支払い能力に余裕がある、すなわち賃上げを実施し、労働分配率を引き上げる余力があることを意味する。逆に偏差値の低い会社は従業員への労働分配率が低いか、もしくは業績不振、負債の多さなどから支払い余地の乏しい企業、と考えられる。

 ランキングが示しているのは財務データから切り取った断面に過ぎない。しかし、ランキング上位には総じて財務体質が健全でかつ成長性、収益性の高い企業が並ぶ。また、株主還元に熱心な企業も目立つ。

 では、その顔ぶれを見てみよう。

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