エアビーは価格を自動決定

<b>エアビーアンドビーでは部屋を貸し出すホストが「スマートプライシング」を利用して価格を決める</b>
エアビーアンドビーでは部屋を貸し出すホストが「スマートプライシング」を利用して価格を決める

 売り手と買い手の価値に対するギャップを埋める橋渡し役として、客観的なデータを活用する動きもある。先行するのが米Airbnb(エアビーアンドビー、以下エアビー)だ。一般人が自宅の一部を宿泊者に貸し出す民泊サービスでも、ビッグデータが生かされている。

 エアビーの宿泊料金は、日々大きく変動している。宿泊料金を決めているのは、部屋を貸し出している「ホスト」ではない。エアビーが機械学習によって生成したアルゴリズムが、都市の宿泊需要動向や物件ごとの「価格弾力性」を予測し、売り上げが最大になる宿泊料金を1日ごとに決定している。

 エアビーは部屋を貸し出すホストに対して、宿泊料金設定を支援するツール「Smart Pricing(スマートプライシング)」を提供している。ホストは宿泊料の上限と下限、受け入れたい宿泊客の数という3点をシステムに入力するだけでいい。アルゴリズムが適切な宿泊料を設定する。

 「オーナーにとって宿泊料の設定は非常に難しい作業だった。様々な情報を集めて、毎日価格を更新し続ける必要があるからだ。そのような苦労を取り除きながら、オーナーの収入を最大化するツールの提供を考えた」

 スマートプライシングのプロダクトマネジャーであるカーラ・ペリカーノ氏はそう説明する。

 アルゴリズムは、(1)都市における宿泊需要(2)物件が存在する場所(3)物件の内容や価格弾力性──の3つから、宿泊料金を決定する。価格弾力性とは、宿泊料金の上下に伴って需要が増減する変動幅の大きさのことを言う。

 アルゴリズムが1日単位の宿泊需要や価格弾力性の予測に使用するデータは数百種類に及ぶ。そして予測アルゴリズムは全て、機械学習によって開発した。学習データの件数は数十億件以上で、予測モデルの「特徴」の数も数十万個に達するという。

 都市におけるイベントの有無なども、アルゴリズムが直近の宿泊予約動向から予測。人間がイベントスケジュールを入力するといったことはしない。

需要よりも価格弾力性が重要

<b>エアビーが米サンフランシスコで設定している街区。通りやエリアごとに細かく価格帯を変えて、最適な値付けに利用する</b>
エアビーが米サンフランシスコで設定している街区。通りやエリアごとに細かく価格帯を変えて、最適な値付けに利用する

 同社のデータサイエンティストであるバー・イフラー氏は、「宿泊の料金を決定する上では、需要の動向よりも、物件の価格弾力性の方が重要だ」と説明する。

 例えば、宿泊需要がスポーツ大会などのイベントに起因する場合、宿泊料金を上げても需要は減りにくい傾向がある。宿泊客の側に「どうしてもその都市で宿泊したい」という強い動機があるからだ。

 一方、宿泊需要がホリデーシーズンの宿泊などレジャー目的である場合は、宿泊料金を上げると需要は急減する。宿泊客は他の物件や都市を選んでしまうためだ。

 エアビーが管理する数百万件の物件それぞれの価格弾力性も、これまでの宿泊実績データを基に予測している。物件の価格弾力性は、駅やバス停までの距離やその物件が立地する都市のブロック(街区)、これまでの宿泊客による物件のレビューやその内容によって変動する。

 例えば、宿泊客によるレビューの文章が全くない物件よりも、1本でもレビューがある物件の方が、需要の高まりに応じて宿泊料金を引き上げる「強気」の価格弾力性が設定される。レビューの本数そのものは宿泊料金に影響しないが、「三つ星」の評価が多い方が宿泊料金は強気になる。

 米国では物件の住所も宿泊料金に大きな影響を与える。サンフランシスコのような都市圏では、ストリートが1つ違うだけで、街の雰囲気や治安が大きく変わってしまうからだ。

 スマートプライシングは、オーナーの営業方針も考慮して宿泊価格を決める。エアビーのオーナーは、あくまでも一般人だ。部屋の稼働率を最大化したいオーナーがいる一方で、本業に影響しないよう宿泊客の受け入れをあまり増やしたくないオーナーもいる。

 そこでスマートプライシングは、稼働率を上げたいオーナーの場合はアグレッシブな値付けを、そうではないオーナーには低い稼働率のままで収入を増やせるような値付けを推奨する。

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