半谷氏は力を込めて言う。

 「福島第1原発20km圏内の現実を、五感で感じ、共有して欲しい。原発事故がきっかけで急激に人口が減少し、高齢化を迎えたこの地は、いずれ日本が直面する社会問題の先進地でもある。そこで皆さんが企業人として、何ができるのかをよく考えて」

 半谷氏の言うように、福島沿岸部は大震災によって「未来の日本」を先取りした場所。

 例えば生産年齢人口(15~64歳)は、震災直前は4万3264人だったのが2015年1月では2万9588人にまで急激に減少している。65歳以上の高齢化率も25.9%から33.5%まで一気に上昇した。

 そうした社会問題の解決と企業利益の両方を満たせるアイデアをひねり出すのは容易ではない。例えば安心して子供が暮らせる街づくり、あるいは風評被害をなくすために、凸版の強みは生かせるのか――。

 過去、凸版の研修で考案され、実際に福島で動き出した新規事業もある。耕作放棄地の有効利用などに寄与する菜の花を用いた菜種油の商品開発、グループ企業で保育事業を手掛けるフレーベル館のノウハウを生かした地域のコミュニティスペースづくりなど。いずれも、「志はソーシャル、仕組みはビジネス」の事業だ。

 今回の2泊3日の研修でも参加者は徹底的に議論し、東京に戻っていった。議論された内容は、半谷氏や凸版との間で改めて精査され、被災地での新事業として具現化されていく可能性がある。

 凸版の同社人財開発センターの担当者は語る。「実際に現場を見ると、意外な結果を目撃することもある。現場に立脚しない机上の理論や理屈は役に立たない」。

 現場主義を貫く企業の、「被災地と社員の再生」は、これからも続く。

■変更履歴
本文中、「グロービス経営大学院」の表記を「グロービズ」、「グロービズ経営大学校」としていました。
また凸版印刷の売上高「1兆5269万円」を「1兆5269億円」に訂正します。本文は修正済みです。 [2016/3/11]