1本の電力線で電力とデータを一体で扱うPLCにとって、最大の敵はノイズだ。ディスアグリゲーション技術では、家電ごとに特徴のある電流の波形がその判別に役立っているが、データ通信にとっては、その変動が正確な送受信を妨げる要因になる。

 そこでパナソニックはノイズ状況を見極める技術などを活用し、通信の安定化を図った。「2km程度であれば電力線でデータ通信できるようになっている」とPLC事業推進室の荒巻道昌室長は言う。

 これが実用化すれば、コンセントに家電を差すだけで、稼働状況や故障の有無といった様々な情報をサーバーに送れるようになるだろう。反対に電力線を通じて家電メーカーが住宅内にある家電のソフトウエアをアップデートしたり、効率的な動き方を指示したりできるようにもなる。法整備が必要になるが、PLCがあれば屋外の電力線をデータ通信のネットワークとして機能させることもできる。つまり全国に張り巡らされた電力線が、巨大な通信インフラに早変わりする可能性もあるわけだ。

分電盤を超えて

 東電がこれまで注力してきたのは、分電盤まで安定して電力を供給することだった。分電盤の向こう側、住宅内での電力の使われ方には無関心だったとも言える。グループの分社化で誕生した東電PGがその方針を転換し、住宅内の家電の使用状況まで把握してサービス基盤を作ろうと動き出した背景にあるのが、福島第1原子力発電所の事故だ。20兆円を超えて膨らむ事故費用を賄うため、東電グループの発電、送配電、小売部門はそれぞれで収益の向上を強く求められるようになった。

 分電盤センサーで得た情報を様々な企業が活用できるようにすれば、東電PGは送配電事業に加え、データ提供やシステム利用料という安定した収益基盤を確保できる。

 東電の方針転換は、消費者向け事業を手掛ける企業にとっても大きなビジネスチャンスをもたらす。東電PGが送配電する世帯数はおよそ2000万軒に上る。仮に全住宅にセンサーが入れば、膨大なデータが集まる。

 これをどう使うか。東電PGが2回実施した企業向けの説明会は、会場が満席になる盛況ぶりだったという。「データに興味を持つ企業は多く、保険会社など想定もしていなかった企業の顔ぶれもあった。どんなサービスに利用できるか、積極的に話し合っていきたい」と東電PG経営企画室の石川文彦室長は期待する。

 課題を挙げるとすれば、個人情報の扱い方だろう。今回の仕組みが実用化すれば消費者のプライバシーをかなりの程度、把握できてしまう。これを様々な企業が利用することに消費者は不安を覚えるかもしれない。個人情報を守る仕組みをしっかりと整えられるかがポイントになりそうだ。

(日経ビジネス2017年1月16日号より転載)

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