住宅内の家電がいつどのように使われているか、簡易な装置で把握する。家電にはそれぞれ特徴的な電流の流れがある。これを手がかりに稼働状況を割り出す。宅配業者から保険会社まで、多くの企業がその情報を活用しようと動き出した。
(記事中の情報は、「日経ビジネス」2017年1月16日号 に掲載した時点のものです)
冷蔵庫に洗濯機、テレビ──。住宅内に数多くある家電製品の稼働状況をリアルタイムに把握できれば、住人の生活パターンや家族構成などが手に取るように分かる。その情報は消費者向け商品やサービスを手掛ける企業にとって宝の山。例えば見守りサービスの事業者は炊飯器の稼働状況を基に、高齢者がきちんと食事を取っているか正確に把握できる。
これまでもHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)などを活用すれば、家電の使用状況を把握できた。ただシステムを導入するにはコストが重く、対応する家電をそろえるなどの手間もかかった。そこで電力の送配電事業を手掛ける東京電力パワーグリッド(東電PG)が目を付けたのが分電盤だ。住宅内に取り付けられ、電力会社から送られてきた電気を各部屋の照明器具や電化製品に供給している。「ここに簡易なセンサーを取り付ければ、個々の家電の動きが見えてくる」(東電PG経営企画室の柳達也氏)という。そこで同社は日立製作所などと組み、昨年11月から実際の住宅で実証実験を開始。今年3月をめどに検証を終え、早ければ年内にも実験的に見守りサービスなどの事業につなげたい考えだ。
センサーで稼働状況を把握
家電製品の多くはそれぞれ特徴的な電流の流れ(波形)を持っている。「掃除機の場合、電源を入れた瞬間『ラッシュ電流』と呼ばれる大きな電流が流れて波が大きくなる」(同・中城陽氏)といった具合だ。
電力供給の根本に当たる分電盤には、家電ごとに特徴的な波形がごちゃまぜになった電流が流れ込んでいる。時々の家電の使用状況によって細かく波の形が小さくなったり大きくなったりしているわけだ。
随時変化している電流の波形を分電盤内のセンサーで捕捉し、サーバーに送って各家電が持つ波形の特徴をヒントに分離する。これにより、いつ、どんな家電が稼働しているのか把握できる。この技術は「機器の分離(ディスアグリゲーション)」と呼ばれ、ソニー出身の只野太郎氏が2013年に創業したベンチャー企業インフォメティスと、韓国を中心に事業展開する米エンコアードの2社が手掛けている。そこで東電PGは両社と連携し、それぞれのセンサーを分電盤に取り付けた。
インフォメティスやエンコアードは洗濯機やエアコン、電子レンジなど住宅で使われる10種類前後の代表的な家電の波形をあらかじめ把握しており、両社とも8~9割の精度で何がいつ動いたか明らかにできるという。さらに「ニーズがあれば分析対象にする家電の種類を増やしていく」(インフォメティスの只野社長)考えだ。
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