“2階建て”で発電量45倍に

 竹中工務店は建築物用に開発された制振装置の原理を応用し、「振動増幅器」を開発した。制振装置は重りとバネを組み合わせたもの。本来は地震で揺れた際、重りを大きく振動させてエネルギーを相殺し、建物の揺れを小さくする役割がある。この原理を逆に使えば、振動を大きくできるわけだ。

 増幅器の上に振動発電装置を重ねて設置する“2階建て”方式を考案。2つの機器はそれぞれ固有の揺れに反応するため、組み合わせることで幅広い種類の揺れをエネルギーに変換できるようになった。振動増幅器を取り付けると、「振動発電装置単体の時と比べて発電量が約45倍に増加し、対応する周波数帯も4倍に広がった」(竹中技術研究所)という。

パナソニックの振動発電ユニットは一辺4cm前後

 パナソニックは、圧電効果と呼ばれる振動発電方式の開発に注力する。振動で重りが揺れると発電装置内の圧電体(セラミックス)に力が加わり、電圧を生み出す。パナソニックは装置本体とは違う周波数で揺れる、自動車関連の制震ゴムを組み合わせた、新たな振動発電装置の開発を進めている。2~3年後の実用化が目標だ。

 普及に向けた課題が機器の耐久性だ。いくら電池交換が不要でも、振動で壊れては意味がない。振動発電の商用利用には「発電装置が5~10年は稼働し続けられることを確認する必要がある」とパナソニック・オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の勝村英則主任技師は指摘する。

 そこでパナソニックや竹中工務店は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などと協力し、神奈川県内にある独化学大手BASFの工場などで実証実験に乗り出した。ポンプやサーバールームなどに振動発電機を取り付け、実地で発電状況を調べている。2016年半ばまで検証を進め、工場で振動発電を大規模導入する際の課題を抽出するとしている。

 IoTを背景にセンサーの市場規模は拡大しそうだ。富士キメラ総研によると2019年度の世界の市場規模は2014年度比2割強増え、5兆5576億円になる見通し。それに伴い振動発電の市場も成長が確実視される。技術規格化などは欧米が積極的だが、センサーの技術と広帯域化では日本勢が一歩リードしている。「ちりも積もれば山となる」を地でいく技術だ。

(日経ビジネス2015年11月16日号より転載)