電池と配線が不要、小型化も

 TOTOのトイレからは、振動発電の3つのメリットが読み解ける。1つ目は電池が不要な点だ。定期的に電池を交換する手間が省けるため、僻地のダムや橋梁などにも手軽にセンサーを設置できる。

 社会の隅々までセンサーを設置した後に電池交換が必要となると、管理の手間は膨大になる。それに対し、振動発電を利用してセンサーに電力を供給する仕組みを整えれば、一度設置したら“半永久的”に情報を発信し続けられるわけだ。

 電池を含めた電源が不要になれば配線工事も必要なくなる。これが振動発電の2つ目のメリットだ。工場やプラントなど、様々な製造設備や配管が入り組んでいるところに、追加的な配線工事をせずにセンサーを設置できるようになる。

 3つ目は電池と配線を省くことで、センサーそのものを小型化できること。実際、TOTOのトイレでも、振動発電装置はリモコン部分の一角に収まる程度の小ささだ。部品点数が少なくなれば、その分、故障のリスクを低減できる可能性がある。

 TOTOはミツミ電機製の振動発電装置を採用した。250万回押しても壊れない耐久性があるという。ミツミは装置の薄型化を進めており、照明やドアの開閉などにも採用を目指す。

 活用されずに埋もれている微弱なエネルギーを「収穫」し、電力に変換するという構想は「エネルギーハーベスティング(環境発電)」と呼ばれる。エネルギー源は、光や熱、電波など様々だが、実用化に向けて大きく前進しているのが振動発電だ。

 「従来は特定の周波数(1秒当たりの振動数)でしか発電できない装置が多く、振動発電を実際の現場で使いこなすのは難しかった」と、NTTデータ経営研究所の竹内氏は話す。

 同じ橋梁でも、場所によって揺れ方は微妙に異なる。柱の上部と下部、橋桁の中央と先端では、違うタイプの揺れが生じる。橋梁などに振動発電装置を設置する場合は、綿密に状況を調べ、その場所に応じた周波数で機能するよう「チューニング」を施さなければならない。手間がかかるうえ、揺れ方が変わると発電できず、信頼性に欠ける。

 これを解消するのが「様々な種類の揺れに対応できる広帯域化技術」(竹内氏)。下の図のように、従来の振動発電は事前に設定した特定の「速い揺れ」「大きい揺れ」などしか狙い撃ちできなかった。広帯域化すれば様々な“変化球”にも対応して発電できる。

 広帯域化技術で先頭を走るのが、竹中工務店やパナソニック。従来の振動発電装置に別の機器を組み合わせることで、収穫できる振動エネルギーを増やそうと取り組んでいる。

様々ないタイプの揺れを電気に変える
●振動発電を「広帯域化」するメリット