既存方式の限界を突破

60テラバイトのHDDも視野に
●図2 HDD1台当たりの容量とその量産時期

米ウエスタンデジタルはMAMR方式によりHDDの面記録密度を年率15%増のペースで拡大し、2025年までに40テラバイト以上の製品を実現できるとしてる。また、MAMR方式を使えば面記録密度4テラビット/インチ2(ディスクを8枚内蔵する3.5インチ型HDDの容量で60テラバイト弱)が可能になるという。これらの主張から推測すると、28年ごろに60テラバイト程度のHDDを実現できることになる(18年以降の容量の値は『日経エレクトロニクス』の推測で、垂直磁気記録方式の値はSMR方式を使わない場合)

 現在、ニアライン向けの3.5インチ型HDD 1台当たりの容量は最大14テラ(テラは1兆)バイト。米ウエスタンデジタル(WD)とシーゲート・テクノロジーが競い合うように、サンプル品を出荷している。両者の後塵を拝してきた東芝は、18年に14テラバイトの製品を量産する計画だ。HDD業界では、同クラスの製品の最大容量は20年ごろに20テラバイトになるとみられていた(図2)。

記録ヘッドの磁界を大幅に強める
●図3 MAMR方式の記録ヘッドの構造
MAMR方式では、記録ヘッドのギャップに組み込んだスピントルク発振素子で高周波磁界を発生させることで、記録媒体中の磁性体を磁気的に振動させ、保磁力の高い記録媒体でもデータを書き込みやすくする。これは、磁気ヘッドが発生する磁界が相対的に大きくなったのと同様な効果をもたらす

 ところが、WDが頭ひとつ突き抜ける成果を17年10月に発表した。同社は、HDDの記録密度を大幅に高めるマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)方式の実用化にめどをつけたという。この技術を適用した製品を19年に出荷し、25年までにデータセンターなどに向けた3.5インチ型HDDで40テラバイト以上を実現すると表明した(図3)。

 HDDの記録容量は既存の方式では頭打ちとなっていた。記録密度向上の原動力だった垂直磁気記録方式の効果が薄れてきたからだ。最近では装置に内蔵するディスクを増やしたり、装置の使い勝手が変わるSMR(瓦磁気記録)方式を導入したりして、装置当たりの容量を1年で2テラバイト程度増やすのが精いっぱいだった。

 この状況が変わる。WDはMAMR方式の導入で面記録密度を年率約15%増で増やし続けられると主張する。28年には60テラバイトを実現できる計算だ。WDはMAMR方式で面記録密度4テラビット/インチ2以上を達成できるとも表明している。現在の14テラバイト品がちょうど1テラビット/インチ2程度なので、容量に換算すると56テラバイト以上に相当する。

HDDとSSDの価格差は継続
●図4 HDDとSSDの1テラバイト当たりの価格差
ウエスタンデジタルが予測したHDDとSSDのテラバイト当たりの価格。MAMR方式でHDDの容量が継続的に拡大することで、2028年ごろになっても両者の間には10倍程度の価格差が残ると予測している

 この発表がHDD業界にとって朗報なのは、競合するSSDとの価格差を長期間、維持できると見込めるからだ。記録密度が上がれば部品コストを変えずに容量が増えるため、容量当たりの価格は下がる。この結果HDDとSSDの価格差は28年ごろまで約10倍のままだという(図4)。NANDフラッシュ大手の米サンディスクを買収したWDの予測だけに、信ぴょう性は高いといえるだろう。