スマートフォンだけでなくパソコンの記憶装置としてもフラッシュメモリーが主体となってきた。HDDの役割は終わった感があるが、データセンターなどでは引き続き需要は残る。米ウエスタンデジタルがライバルに先行して、大容量化に適した新記録方式を開発した。
(日経ビジネス2017年12月25日・2018年1月1日号より転載)
「HDDはNANDフラッシュメモリーに駆逐されるんじゃないか。しばらく前には、そう思っていた。今は、当面はすみ分けられるだろうと考えている」。HDDメーカーから、こうした声が漏れ始めている。2016年から17年にかけて、NANDフラッシュメモリーの供給不足でHDDの需要が持ち直したことが一因だ。もう一つの理由は、HDDでなければならない用途が、少なくとも今後5~10年は継続するとの予測である。
各社が期待するのは、「ニアラインストレージ」と呼ばれる使い方だ(図1参照)。コンピューターの記憶階層では、主記憶や外部記憶よりもさらに下に位置する。従来HDDが担ってきた外部記憶装置の座は、幅広い機器でNANDフラッシュメモリーや、それを内蔵したSSDに奪われつつある。
ニアラインストレージは、SSDに格納しきれなかったデータを、その1つ下の階層で保存する。主にクラウド環境や企業の情報システムで活用される記憶装置である。
日本HDD協会(IDEMA JAPAN)が17年1月に公表した予測によると、稼働中のストレージ装置の全容量のうちHDDが占める割合は15年に83%だったが、20年でも79%を維持するという。この5年に最も容量が拡大するHDDの製品分野がニアライン向けであり、今後はこの用途向けにHDDの大容量化が進みそうだ。課題は、より大容量の製品をこれまでと大差ない価格で提供できるかどうかである。
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