吐く息に含まれるごく微量のガス成分を高感度に検知するのが呼気センサーだ。近い将来、酒気帯びだけではなく生活習慣病の診断にも使われるかもしれない。スマートフォンと組み合わせれば、血液検査よりも簡便に身体情報を確認できる。
(日経ビジネス2017年12月4日号より転載)
生きていくために繰り返される呼吸。呼気中には酸素や二酸化炭素のほか、微量ながらガス成分も含まれている。
こうした揮発性のガス成分の種類を特定したり、濃度を測定したりするには、従来「ガスクロマトグラフィー」と呼ぶ高価で大型の分析装置が必要だった。最近では半導体センサーを使って、特定のガス成分だけを高感度に検出できる技術が次々と開発されてきた。
富士通研究所は携帯型呼気センサーを使ってストレス性疲労を測定する技術を開発、2017年5月の「第11回 ITヘルスケア学会学術大会」で発表した。呼気中のアンモニア濃度が、唾液中のストレスマーカーの濃度と高い相関を持つことに着目。国立病院機構東京医療センターとの共同研究の成果である。
富士通研究所はかねて、疾病ごとに特有の揮発性有機化合物(VOC)を検出することで、疾病を早期発見できる可能性を追求してきた。血液中のVOC濃度を確認するためには、採血が必要なためハードルが高い。そこで測定する対象として尿や呼気に着目し、測定時の取り扱いやすさから、呼気によるVOC検出を目指している。
呼気中に含まれるガスのうち、肝機能障害やピロリ菌感染との関連が指摘されているのがアンモニアだ。研究グループでは16年、臭化第一銅(CuBr)膜がアンモニアを吸着する性質を利用し、呼気中のごく微量のアンモニアを10秒という短時間で高感度に検出できる携帯型センサーを開発した。
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