この眼力は、品種改良の過程でも大きな威力を発揮する。交配してできた子のすべてを解析するのは時間がかかりすぎるからだ。色や実の大きさ、味、野菜の茎の背の高さ、葉の形や多さなど、「親に近い個体をブリーダーの経験と知識で選別することで、さらに効率的に改良できる」(加屋氏)という。

 トマトやナスで結果が出たことで、ほかの野菜への応用も可能になってきた。たとえばホルモン処理が不要なナスを開発する過程で見つけた遺伝子情報を応用し、同じナス科であるピーマンやトマトにも同様の遺伝子があることを突き止めた。育ちやすい品種への改良につながる可能性がある。その研究の過程では別の発見もあり、種のないピーマンも開発できた。

 近年、新たな病気が発生して対処に困るケースが増えているという。「耐病性を持たせるまでの期間を短くできることは企業として必ずや強みになる」と加屋氏。世界の食糧危機を日本の企業が救う日も、そう遠くないのかもしれない。

(日経ビジネス2015年12月21日号より転載)