解析だけではまねできない

 タキイ種苗が子(図「タキイ種苗がトマトを使って取り組んでいる品種改良の仕組み」のstep 3と4)を解析したところ、親との類似率は50%が最も多く、そこを頂点に山なりに正規分布を描くことが分かった。類似率が80%と高い子は、全体の1.5%ほど。次の交配の時、類似率50%の子と親(類似率100%)を掛け合わせれば確率的に平均75%の類似率を持つ子ができるが、80%と100%を交配すれば類似率90%の子ができる。「親トマトに近いものを選んで次の交配をさせることで、新品種完成までの交配回数を減らすことに成功した」(基礎研究グループの遠藤誠研究員)。

交配の結果は大きな個体差が出る
●大小トマトを交配した例

 KeyGeneの技術があったからこそできたが、他社にこの技術があったとしても簡単にはまねできないという。

 味がよいトマトなど質のいい親になる素材を蓄積して持つことが困難なためだ。タキイ種苗では、創業から180年をかけて、約30万に及ぶ種などの素材を蓄積してきた。中には、白菜の源流の一つである「包頭連」など、一般には入手できない古い品種や国の研究機関でも持っていない貴重な品種が含まれている。

 それらを使って、これまで2000種の野菜や草花の新種を開発。既に自社の主要野菜のほとんどについて遺伝子情報を取得し、データベース化している。

 品種改良で付加したい特性を持つ苗を見つけ出す「眼力」も必要になる。その典型例がナスだ。タキイ種苗はその眼力を使って、手間がかからずに育つナスの開発に成功した。

収穫までの作業時間が25%削減できたナス

 ナスは育成環境が低温や日照不足だと、実が付きにくくなったり太くならなかったりする。それを避けるため、ナスの花にホルモン処理を施すことがあるが、各花に複数回、ホルモン剤を吹き付ける作業は膨大な手間がかかる。タキイ種苗によると、種を植えてから収穫までの作業時間の25%が、このホルモン処理にかかっていた。

 そんな中、2007年夏にブリーダーと呼ばれる眼力を持った技術者が、ほかのナスよりも実が安定して大きく育っているナスに気づいた。「身が付きやすい突然変異が起きたのでは」というブリーダーの見立ては正解だった。そのナスをベースに品種改良を重ねた結果、ホルモン処理をしなくても育つナスを開発できた。