遺伝子の違いを見つける

 これまでの品種改良で最大のネックになっていたのが、他でもない「時間」だ。品種改良は、耐病性トマトなど欲しい特徴を持つトマトに基礎となるトマト(親トマト)を何度も掛け合わせ、耐病性を持たせつつ、徐々に親トマトに近い品種に改良していく。せっかく交配しても、育成の途中で欲しい特徴が失われたり、親トマトより大きさや色、形、味などが変わってしまうこともある。期間短縮には、交配でたくさんできた子の中から最も親トマトの特徴を引き継いだ苗を選び出すことが肝要になる。だが、外見だけでは判別が難しい。

タキイ種苗がトマトを使って取り組んでいる品種改良の仕組み
遺伝子情報を解析し、親トマトに近いトマトを選ぶことで、効率的に改良ができるようになった

 しかも相手は生きた植物。交配して収穫し、種を採れる機会は半年に1回。交配の最終段階になると1年に1回しかない。全ての工程に10年以上かかるのが当たり前で、「社員が入社して退職するまでの三十数年ほどが経過しても品種改良が終わっていないことも珍しくない」(加屋氏)。

 改良の期間短縮に有効な手段として既に知られているのが、遺伝子組み換えだ。だがタキイ種苗では、遺伝子組み換えはしないという方針を持っている。「体内に取り込んでも本当に大丈夫かどうか、消費者が不安に思う食べ物を世に送ることはできない」(加屋氏)からだ。

 また遺伝子組み換えは時間の面でも課題を抱える。多くの国々で、市場投入の前に人体への安全性を確かめる審査を受ける必要がある。

 ではタキイ種苗は遺伝子組み換えをせずに、どうやって品種改良の期間を短縮できたのか。

 突破口を開いたのが、オランダのバイオテクノロジー企業であるKeyGeneが開発した植物ゲノム解析技術だった。タキイ種苗はKeyGeneの親会社に2005年に出資し、技術がある程度完成した2008年から現在の解析技術を導入してきた。

 KeyGeneのゲノム解析技術を使うと、交配してできた子の中から最も親に近い特徴を持つ苗を効率的に探し出すことができる。子の遺伝子を解析すれば、付与したい特徴を引き継いでいるか、遺伝子的にどれくらい親に近いかを確実に判別できるからだ。